第4話
若者の間に『親ガチャ』というものがある。
実に嫌な言葉である。誰が言い出したか知らないが
何を思って言い出したのか…。
「親ガチャにハズレた〜」と言う若者をテレビやネットを見る度、腹が立つ。
私は子供を産んだ事が無いので親にはなった事は無いが、『親ガチャ』という言葉には思う事がある。
「親ガチャにハズレた」と言う若者は言う。
「勝手に産んだのはそっちだろう」「こんな親の元に生まれてきて最悪だ」と。笑いながら言う。
大抵の子供は望まれて生まれてくる。喜ばれる。
それは当たり前か?
答えは否である。望まれない子供はどうなるか想像した事はあるだろうか?
望んでも生まれてくる事が出来ない子供もいる事を知っているのだろうか?
望まれない子供はどうなるか…。
産婦人科では中絶だ。「いらないから」とあっさり
中絶手術で処置される。それが出来なければ大概待っているのは虐待である。
私は産婦人科で働いていた頃数え切れない程中絶手術の手伝いをしてきた。初めて目にした時はショックで涙も出なかった。何も言えなかった。それくらい悲惨な手術だ。
望んでも生まれてこれなかった子供達は死産だ。
産声を上げる事無く、ただ静かな分娩室で泣きながら母親が苦しみながら死んでいると分かっている我が子を産むのだ。
産婦人科には様々な子供達が来院する。様々な女性がやって来る。私は様々な事情の事を見てきた。
警察にも児童相談所にも連絡した事がある。
「親ガチャにハズレた」と言う若者に言いたい。自分がどれほど恵まれた存在であるかを。
望まれて生まれて来れた事がどれほど幸せな事かと
今そうやって笑っていられる事がどれほどラッキーな事か…。
親に感謝しろとは言わない。恩を感じろとは言わない。でもそうやって軽々しく『親ガチャ』という言葉を使わないで欲しい。
「勝手に産んだ」と言わないで欲しい。「産んでくれと頼んでない」と言わないで欲しい。
自分が笑っていられる事を当たり前だと思わないで欲しい。
望まれない子供だっている。産声を上げれない子供がいる。必ず泣く人達がいる。
『親ガチャ』と言い出した人はそれを知っているのだろうか…。
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