第13話 【私と子供の願い】Ⅴ
「いくわよ」
別に相手に言ったわけではない私の言葉
「グォゴォォォォギィ」
人外に届いたかわからないが、私の言葉に反応しこちら向かって襲ってきた
足が増え四足歩行で思いっきり地面を蹴りだし、勢いよく飛び、吠え、私目掛けて右手を振り下ろした
「ッ‼」
間一髪、って程では無かったが、ギリギリのとこで上空に飛び逃げる
地面には衝撃が走り、視界でも見える程の余震、そして砂煙が沸き上がる
私が立っていた場所には地面が抉れ大きなクレーターが出来ていた
その跡からは避けていなければ私は今頃人の形をしていなかったことが窺える
人外は手応えを感じなかったのか動きを止めクレーターの方を見た後、上空に逃げた私を確認し、”ニヤッ”と不気味に笑う
背中から腕が生え、複数の腕が空中で動きが取れない私目掛け掴むように飛んでくる
先程までの私を壊す力ではないことに違和感を感じたが、捕まる訳にはいかないと私のセンサーが訴えてくる
私は襲ってくる腕を弾き、その勢いを使い空中で方向を変え、別の腕を弾く、と空中の制限された中で回避し続け、人外の足元まで降りた
空中での勢いをそのまま利用する為に頭から地に向かい、着地の反動を使い両腕で地面を押し、跳ね返らせ、空を見て上がっている人外の顎目掛け両足で蹴りを入れる
視覚外からの顎への一撃、人外でも急所なのか頭を反らし、よろけている
そんな隙を見逃さず、空中で身体を起こしそのまま顔面に拳を入れる
鈍い音が空に響き、クリーンヒットした人外はそのまま背から地面に落ちる
人外は一切の動きがなく、完全に沈黙している
「呆気ないわね…」
ホント呆気ない、ただ力が少し強いだけの木偶の坊
「こんなものか…」
横たわる人外を確認する
先程までと違って背中から生えた腕も増えた足もなくなっており、大きいだけの人の形に戻っている
とどめを刺す為に首元に駆け寄った私は沈黙している人外に完全に油断していた
突如、目を開け関節を無視した右手の動きに反応が遅れてしまった
(あー…やっちゃったかなコレ…)
”ガシッ”と掴まれそのまま病院の壁に投げ付けられた
「…カハっ!」
”ドンッ”と勢い良くぶつかりその衝撃に身体の自由が奪われた
「キィエェェェェ!」
奇声と共に再び人外は姿を変えた
四足歩行に尻尾、背からは腕が生え、人の形から獣へと変貌した
立てないでいた私を背中から生えた腕を使い、捕まえ宙へと持ち上げる
「カミ…………キガ」
それはまるで祭壇に捧げる贄のように
「ホシ…」
人外の口からは人語とも取れるような言葉が聞こえるが私にはわからなかった
「…案外タフなのね、あなた」
まだこんな力があったなんて、率直な感想だった
沈黙に油断してたとは言え、殺った手応えはあった
まさかまだ動けるなんて…
人外は品定めでもしているかのように顔を近づけてくる
「だけど…効いてないわけではなさそうね」
さっきまでと比べ、明らかに力が弱まっていた
私を握っている手に力を加えると簡単に腕から抜け出すことが出来た
「安心してもう終わらせるから」
抜け出した私に向かって人外は力を溜めるように地面を掴み、口を大きく開けた
建造物は震え、草木は靡き、空気が騒めく
人外の口元には無数の光が集まり、”何か”がそこから放たれそうな雰囲気だった
光は収束し私目掛けて今かと放たれるようとしている
流石の私もまともにこれを受けてはただでは済まない、私と言う存在は光に飲まれ消え失せる
しかし、そんなことはなかった
(…遅い‼)
次の瞬間、私は放たれる前に人外の喉元を掻っ切った
宙を舞い、光は霧散し、地面に転がる人外の首
転がる首から見開いた目がこちらを見つめる
人成らざる者のことなんか私にはわからない、しかし確かに私に対し何かを告げた
「カ……リョ…イ…」
謎の言葉を最後に首と胴体が切り離された人外は砂のようにゆっくりその場から消え去る
「終わった…」
人外や戦いの痕跡は消え、まるで何事も無かったかのように世界は元の姿に戻った
あなたの願い叶えたわよ
私に出来るのはここまで
後は…運命次第
どうか幸運を
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます