第5話 【私と父】Ⅱ

 父さんは立っていて、私は正座。見下ろされているような状態だが、私は父さんに対し見下すような視線をし、言葉は怒り任せではなく冷静にとても冷たく淡々と口から出ていた


「私の力を成長させて剥奪する。そのあとは用済み」


 私は立ち上がり、膝に付いた汚れを払い


「だから神社に縛っているようだけどいい加減無意味だと気付いたら?まぁ、そこまでしてでも母さんを生き返らせたいそうだけど…」


 父さんの方へ一歩、また一歩と徐々に近づいて行き


「下心しかないあなたの方が恥を知ったらどうなの?」


 下から覗き込むように言葉を発する

 愛妻家?ただの未練がましい男なだけ。何かに縋ることでしか自分を保てない残念な男

 私が言い終わると父さんの右手が私の首下まで伸び、そのまま握りしめる


「誰に口聞いてんだ?立場を考えさせる必要があるようだな」


 力任せに片手で私を持ち上げ、私の足は段々と宙に浮いていく

 喉を絞められ苦しいが、頭はとても冷静であった


「そもそも、お前が生まれて来なければ楓は…妻は死ぬことはなかった」


 手の力がさらに強くなる。最愛の妻を奪った目の前の人物を本当に殺そうとしてくる。例え、それが自分の娘だったとしても


「妻を殺した悪魔め」


 私の首に恨みを晴らそうと容赦なく力を入れている右腕に神谷君は引き剝がそうと跳びつく


「落ち着いてください‼」


 彼の力じゃビクともしない、それは彼もわかっている。それでもなんとかしようと必死に首から手を剥がそうとしている

 父さんはそんな彼の様子に対し腕を横に振り払い、私は勢い良く地面に激突する。彼もその勢いにより「うわ!」と驚いた声と一緒に地面に向かって倒れ込んだ


「紅葉ちゃん大丈夫⁉」


 彼も痛かっただろうに、自分よりも私の心配をし駆け寄ってくる

 こちらに対し背を向けながら父さんは話す


「お前に対して愛情も無ければ、罪悪感も無い。その力に価値があるのだけだ。」


 とても自分の娘に対して言う言葉じゃない。父親として最低だ。だけどそれが事実だ。これまでも、そしてこれからも。私は娘ではなく母さんの為の生贄でしかない


「次またその減らず口を叩くようならその力が成長する前にお前を殺す」


 冷たい目線でこちらを一瞥し、吐き捨てるように言い放つ

 この男、本当に最低だ


「べーっ!二度と来るなクソ親父!」

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