第4話 スキル無しの異世界転移

その日もいつものように教室で寝ていた。


何故か、本当にヤル気が起きない。


休み時間はいつもこうして眠っている。


いつからこんな過ごし方しているのだろうか?


解らないけど、まぁいいや。


だがこの日はいつもと違っていた。


「鏑木、鏑木、起きろ」


「鏑木くんで最後だから早く女神様の所にいって」


「えっ女神様? 何で……」


何がなんだか解らない。


女神なんてこの世に……いや否定は出来ない。


心の中のどこかに超常の存在が……あれ、なんで居ると思っているんだろう?


「鏑木が寝ているときに異世界の召喚で呼ばれたんだ、そして今は異世界に行く前に女神様が異世界で生きる為のジョブとスキルを授けてくれている最中なんだ」


「そうか……」


僕は周りを見渡した。 白くて何もない空間のようだ。


こんな空間……どこかで見た様な気がする。


父、母……僕のじゃない……誰のだ……駄目だ思い出せない。


しかし、この空間凄い……僕でもこれは……なんだろう。


「それじゃ、先に行くぞ、お前もジョブとスキルを貰ったら来いよ」


「ああっ」


そういうと彼らは走っていってしまった。


どうやら、ジョブとスキルを貰った者から先に転移していくみたいだ。


僕は、女神様らしい金髪の美しい女性のいる列に並んだ。


頭の中がモヤモヤする。


僕は、最近ライトノベルを読んでいる。


昨日読んでいた小説もなんならライトノベルだ。


剣と魔法の世界……心が躍った。


次々に同級生がジョブとスキルを貰っていく中、いよいよ最後の僕の番がきた。


他の生徒には手をかざして「異世界に行っても頑張るのですよ」と声を掛け、すぐに送り出していた。


だが、僕の番になると何やら話を始めた


「あっさっき寝ていた子だよね? ほかの子が「アイツ疲れているから寝かせておいてあげて」というから寝かせて置いたんだけど、事情は解らないよね?」


うん、すっかり寝ていたから何も知らない。


「はい」


「簡単に言うと、異世界ブリエールで魔王が現れ困っている、そしてブリエールの1つの国の王が異世界召喚をして君たちを呼ぼうとしたの……ここまでは解る?」


魔王様?


おかしいな……魔王様が怖い存在に思えない。


なんだか、紳士的な感じで娘思いのナイスダンディが頭に浮かぶ。


それに、何故だろうか?


『様』の敬称無くして呼ぶのが憚れる。


まぁ、気のせいだよな。


「何となく小説とかで読んだ話にそんな話があった気がします」


「うん、同じような小説が最近はあるよね! まさにそれ! それでね。私は女神イシュタスって言うんだけど、そのまま行ってもただ死ぬだけだから、向こうで戦ったり、暮らせるようにジョブとスキルをあげているのよ」


「同級生からさっき聞きました……ジョブは職業ですよね。スキルは……」


魔法とか特技みたいな物かな。


「スキルは魔法や剣技……とか、解るよね?」


『鏑木! お前は贖罪……魔法は駄目だ……』


頭の中に『魔法は駄目』そう語りかける存在……親子三人が浮かんだ。


「ごめんなさい……僕はスキルは受け取れません」


「なにか事情があるのですか?」


「理由は解りません……ですが、僕は魔法に関係する物を受け取る訳にはいかない……そんな気がするのです」


「そうですか……ですが異世界転移はもう止められません。そうなると……ジョブは魔法とかけ離れた物を用意しますが、他の方全員にあげている収納魔法もあげらえれないし、精々、魔法以外となると、翻訳位しか無理ですよ……悪いことは言いません。皆と同じ物を貰っていきなさい」


『駄目』


僕は……なにかの罪を償っている最中なのかも知れない。


頭の中に煩い程『魔法は駄目』そういう声が聞こえてくる。


「それでも僕は受け取れません」


「そうですか……貴方の人生は凄く過酷な物になるでしょう。仕方ありません。魔法に無縁なジョブを差しあげます。ですがスキルは翻訳のみになりますよ? 良いのですか?」


「構いません」


「異世界に行っても心を強く持ち頑張るのですよ」


なんでこんな無茶な事を僕は言ってしまったんだ。


寝ている僕の為に、説明を再度してくれた優しい女神様に。



「無理言ってすみません……頑張ります」


「……頑張ってね」


女神イシュタス様の悲しそうな目に見送られ、僕は異世界へと旅立った。


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