第2話 お姉さんと過ごす
自分の事をルナと名乗るお姉さんは、地球と呼ばれる宇宙?に数多ある星中の一で、そこから宇宙船とやらに乗ってやって来たのだそうだ。
その宇宙船からこのユグドラシルの調査をする為に、探査用の小型機?でこの星に入ったそうだが、その際に未知の生物に攻撃されて、機体のバランスを崩して墜落したらしい。それがあの鳥のような形をした金属のアーティファクトだろう。
機体には二体のアンドロイドと呼ばれる機械人形が乗っていたそうだが、先日回収されたオートマタもどきの人形がきっとそれに違いない。
僕は彼女に訊かれるままにこのユグドラシルの世界の事を話した。
彼女は魔法の存在に驚愕して、魔素からエーテル、魔法、魔法生物、魔法植物、魔石、魔鉱石など、様々な事に興味を示した。
そう、お姉さんは学者なのだ。
それも
彼女の住んでいる星は資源が枯渇して来ていて、他の星に新しい資源やエネルギーを求めて探索しているのだと言う。
彼女はこの星に人が住み、文化がある地点で、探索は一旦中止しなければならないのだと言う。この星に最大限の敬意を表した上で、この世界の王と交渉したいと言って来た。
僕にはよく分からなかったが、この世界で一番大きなこの国、ミッドガルド帝国の王、天帝様とお話がしたいのだと言うことは解ったよ。まあ、あの何でも飲み込む
そしてアーティファクトへの食い付きは凄まじかった。僕の通訳機を皮切りにありとあらゆるアーティファクトの話を訊きたがった。
そして僕も彼女の星の話をたくさん聴いた。
お姉さんの住んでる星は、とても文化が発達していて、サブカルチャーと呼ばれる文化が多数存在していて、人々を魅了して止まないのだとか。
中でも音楽やグルメ、マンガ?やアニメ?ゲームと呼ばれる文化が著しく人気が高いのだと言うが、僕の理解が及ばないので、その一端を彼女の持つデバイス?で見せてもらった。
凄い!
特にマンガやアニメ、ゲームには感動すらした。こんな面白い文化があるなんて、地球と言う星へ僕も行ってみたくなったよ!
音楽には僕も詳しくなかったが、この世界では聴いたこともない音楽ばかりで新しさを感じた。
グルメにあっては食材が違うので、同じものは食べる事が出来ないと言う。つまり、断念せざるを得なかった。
彼女が退院して、僕は彼女を連れて回して、この世界の文化を紹介しつつ、研究者目線でこの世界の資源について話をした。
そうしたら彼女は僕の研究所も見てみたいなんて言い出したものだから、僕は乗り気じゃ無かったのに仕方なく研究所へ戻ったのさ。
そうしたらどうだ? 彼女はまるで子供のように目を輝かせて研究所を見て回るじゃないか。
アーティファクトの製造工程だとか、新しいアーティファクトの研究だとか、そんなに見ていて面白いものなのだろうか?
僕には理解出来なかったが、彼女が喜んでいるのを見ているのは気分が良かった。
「ほら、こうやって魔法陣を組んで、ここに魔石をセットして、魔力を通すと……」
「にゃあっ! 光った!? いったいどうなってるの!?」
「このランタンの横に付いてる魔石に魔力を注ぐと、魔法陣が発動してランタンの中に充填している魔素へ、働きかけて発光するんだよ」
「じゃあノア君、こっちは?」
「これはとても複雑なアーティファクトですよ? 幾重にも魔法陣を組み込んでいて、魔石を加工して小さな魔晶石を精製したモノを使ってるんだけど、この駆動部には全てそれを施しているんだ」
「ひょええっ!? こんな複雑な動きが出来るの?」
「それどころか、見てください! ちゃんと飛翔して対象者に取り憑くんすよ? そしてほら、発信機になってるんだ」
「うんにゃああ! すんごいねぇ〜!?」
いちいちリアクションが可愛らしいもんだから、僕も調子に乗ってアレコレ喋ってしまう。お姉さんとこんなに親しく話が出来るなんて、なんか幸せな気分だよ!
「あ、そうだ! 明日は帝都に行こうか」
「帝都に?」
「うん、僕の友達と連絡が取れてね? 面白そうだから天帝様が謁見してくれるって言うんだよ。面白そうだからって失礼だと思わない?」
「ふぁっ!? この世界の王様ってそんなにフランクな感じなの!?」
「いやまあ、僕も天帝様は知っているけど、新しい事には目が無いと言うか、好奇心旺盛なお方なんだよ」
「ふぇええ? よし! き、気合入れないと!!」
「まあ、そんなにかしこまらないで良いからね? でもそんな事は無いと思うけど、敵意は絶対に向けないでよね? 命の保証は出来かねるから」
「何それ怖いっ!?」
「そりゃあ天帝様だよ? ロイヤルガードは特級だよ。そうじゃなきゃ気軽に謁見なんて出来ないからね?」
「『気軽に謁見』自体が間違えてる気がするけれど、解ったわ!」
よし、これで明日も仕事しなくて済むぞ♪
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