第1話 お姉さんは地球人?
焼け焦げて真っ黒な外殻から現れたのは、祠の女神像のようにムチムチボディをわがままに持て余した、人間の女性だった。
外殻の中は幸いにも燃えておらず、彼女の白い肌には火傷の痕もない。
しかし中の温度が異常に高かったのだろう。 大量の汗をかいて下着までグッチョリと湿っている。
「んんん……」
コホン……、何とも悩ましい。
因みに下半身から汗とは違う液体まで漏れてしまっているようだ。
いやあ、どうしたものか?
ずっと見ていたいがそう言うわけにもいかない。彼女は息をしているのだから! 決していかがわしい考えなんてしてないんだからね!? だって生命に関わることだろう!? 僕だって男なんだから、少しくらいエッチな気分にだってなるよ!!……えっ?
つい本音が漏れてしまったようだが、僕は人を見殺しに出来るような残忍な性格は持ち合わせてはいない。
僕は研究所に渋々連絡して、事のあらましを説明して応援を要請した。
✻ ✻ ✻
彼女は無事だったが、研究所の医務室では設備が整っていないので、女医さんに身体を綺麗にしてもらってから帝都の総合病院へと移送された。
研究所の女医さんの話では、脳震盪や軽い打撲、捻転等が診られるそうだが、治癒魔法による症状改善が見られず、精密検査の為にマテリアル専門医が居て、包括的にケア出来る病院で診てもらうべきだと言うのだ。
事故現場は研究所の所員がその日の内に鎮火して、そこに驚くべき飛行物体を見たそうな。何でも金属で出来た鳥の形に似たものなのだとか。頭、胴体、翼、尾翼を持ったアーティファクト?いや、アーティファクトと言うには些かの魔力反応も無かったと言う。
そして他にも、まるで動かないオートマタらしき人形も発見されている。
研究員や博士がその全てを持ち帰って研究に当たっているらしい。因みに彼女の着ていたゴツい服もその対象だった。様々な機能が付いているようなのだが、その動力源がよく解らないそうだ。
因みに僕はと言えば、彼女の第一発見者と言う名目で、研究所を抜け出して彼女の病床を見守っている。決して仕事をサボっているわけではないよ? 僕は義理堅いんだ! 困った人を放っては置けないだろう?
彼女はもう二日も目を覚まさないのだ。
それにしても……何と言うか、彼女が呼吸する度にその豊満な胸が上下に動くのだが、ずっと見ていたい。
いや、何度も言うが、僕だって男なんだから
でもまあ、本当は彼女の事を心配している。
この病院の精密検査では、人族の身体と殆ど同じ構成だが、魔力を全く持ち合わせていないらしい。
彼女は得体の知れない飛行物体で突然現れて、得体の知れない体質だと言う。
つまり、この世界の人間ではない可能性が高いと言うことだ。
では一体彼女は何処から来たのだろう? あの飛行物体は、このユグドラシルの空のずっと向こうから飛んで来たと言うことなのだろうか?
だとすれば、コレは事件だ!!
僕は彼女を野次馬から守らなければならない! コレは使命だ! 決して仕事をサボりたいわけじゃないんだからねっ!?
「っん……」
彼女の長いまつ毛の奥から大きなダークブラウンの瞳が現れた。
僕は一瞬ドキッとして、視線を胸から彼女の顔へ移した。そして前のめり気味だった姿勢を真っ直ぐに正した。
「あ! 気がついた?」
「……■■■?」
「え?」
「■■■■■? ■■■■■■?」
「ちょっと待って!?」
これはもしかして僕のアーティファクトが活躍する感じ?
僕が国を出る際に、他の国の言葉をまるで勉強しなかった為に、急遽作った人の思考を読み取って通訳する双方向自動通訳機。
まあ、僕くらいの天才にかかれば、こんなモノは造作も無く創れてしまうのだ!
─コトッ……
「さあ、話してみて?」
「あれ? 言葉が解る!? どうして!?」
「ふふん。 コレのおかげさ! 僕が作った双方向自動通訳機!」
「凄い……。この緑豊かな星に、こんな文明があるだなんて!?」
「星?」
「え、あ! すみません、申し遅れました! 私は地球から来ました、ルナと申します! 誰か大人の方は?」
「地球? あ、はい。僕はノア! よろしくね、お姉さん♪」
「うんうん♪ ノア君はまだ幼いのにしっかりしてるんだね?」
「あのお……こう見えて、僕は大人ですよ?」
「……へえ? それで、大人の方はどちらかな?」
「……ねえルナさん、聴いてる? 僕はこう見えて、大人だって言ってるんだけど!」
「うん、わかったよん♡」
この
「もう! バカにして!! こうしてやる!!」
僕は思いきりよく、そのふくよかな肉饅頭をむんずと握った! 一発くらい殴られたって役得ってもんでしょ?
「やん♡ おませさんねっ! めっ!」
……揉む。揉む。揉む。揉む。
「まだお乳が欲しい年頃なのかしら?」
「……こっちが恥ずかしくなって来たよ、ごめんなさい。僕が悪かったです」
「ん〜ん、全然! 男の子だもんね!」
「だから、子じゃないんですよ。僕はドワーフ族で、こんな見た目だけど立派な大人で……ちゃんと生殖行為だって出来る年頃ですよ?」
「えっ…………………っ!?」
僕は彼女の胸から手を放して、頬に手を当てた。……うん、まだ温かい。
「……お、大人?」
「……はい。そりゃあもう、立派な?」
「すみません、すみません! 私、なんて失礼な事を!」
「いえ、こちらも失礼しましたのでお相こですよ」
「あ……。はい、お相こ?です ……ううっ」
顔を真赤にして途端に胸を隠す彼女の仕草は、僕まで恥ずかしくなってしまう。
どうして僕はあんな事をしてしまったんだろう!? 僕のバカ!!
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