第177話 自己嫌悪に陥りそうになってしまう



 なぜ力を隠そうとするのか私には全くもって理解できない思考なのだが、恐らくカイザルにとっては力を隠す事が今まで利点に繋がっていたのだろう。


 そしてその能力を隠そうとしなくなった、厳密には今のところ全てをさらけ出すのではなく、その力の一部だけではあるものの、それでも今までその一部すら完全に、誰にも気付かれる事無く隠し通して来たのだから間違いなくカイザルは『今までのように力を全て隠し必要はなくなった』と判断したのだろう。


 それに、巷の噂では今帝都の犯罪者を裁く集団がいるというではないか。


 もしかしてカイザルはその組織が裏社会でも十分に通用するレベルまで育て上げたから力を隠す必要が無くなったというのではなかろうか?


 そこまで考えて私は「馬鹿馬鹿しい」と、自分の立てた予想に対して『そんなバカげた夢物語などある筈がない』と嘲笑する。


 その組織は私が作りたかった組織であり、お父様やお兄様では成しえなかった偉業である。


 確かに表と裏という活動する場所の違いがあり、表向き誰でも存在している事が分かっている帝国騎士団という組織と、裏で秘密裏に誰にも悟られずに活動する組織とでは、その組織が活動する時のリスクは大きな差があるだろう。


 当然裏で活動する方が邪魔をする者も少なくスムーズに組織を動かす事ができるというメリットがあり、逆に方々からがんじがらめになり中々組織を動かす事ができないというのは表で活動するデメリットであるとは思う。


しかしながら表で活動するというメリットも当然ある訳で、資金援助のしやすさや団員の集めやすさ、そして国民に周知されているからこそある様々な場所で自由に動ける範囲も広がるなどである。


そして私はこの件に関してはどちらが良いかとかではなく、私の夢の一つを私よりも早く叶えたかもしれない組織があるという事実に、モヤモヤした感情を抱いてしまうのである。


 勿論、そのような悪を潰す為の組織があったに越した事はないのは理解しているし、本来であれば私のような辛い思いをする者が少なくなるもしれない事に喜ぶべきなのかしれないのだが、それらの感情よりも『悔しい』という嫉妬に近い感情が勝ってしまう自分自身がいる事に気付いて自己嫌悪に陥りそうになってしまう。


その組織を作ったのがカイザルだろうが別の誰かであろうが……先を追い越されたのならば追いつけばいい。


悪を取り締まる組織は多い方が良いに決まっている。


「ねぇ、このまま順調にアイーダが勝ち進んだら、今噂のカイザルと当たるんじゃないの?」


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俺であればもっと上手く、そしてカッコよく立ち回れる



あらすじ

 主人公は小さい頃から『〇〇君は優しいね』と言われて生きてきた。

 そう言われる事は嫌ではなくむしろ嬉しくもあったので俺は率先して他人の役に立とうとして生きてきた。

 その結果が保証人からの借金地獄である。

 人生に絶望して食べる事さえする気力も沸かなくなり日に日に衰弱していくある日、人気ゲームの悪役を主人公にしたライトノベルを読み、その生き様に強く憧れると共に『俺ならばもっと上手く立ち回れるのに』と思いながら衰弱死してしまう。

 そして目覚めると、先程まで読んでいたライトノベルの主人公であり、人気ゲームの悪役キャラであるロベルト・フォン・クヴィストに転生しているではないか。

 ならば、俺がコイツの変りにスマートでカッコよく、死亡フラグをぶち壊しながら生きて行こうではないか。




 そして、ここまで読んでくれたアナタには読みたくなるギアスをかけました(*'▽')ノ



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