第175話 心へのダメージは大きいだろう



「やっと理解し始めたようだね。俺よりも弱いという事実に。そもそもこっちは低級等の魔術しか行使していないのにお前は俺に手も足も出ない。手加減しているのに相手にすらならない。それがお前の実力だよ」

「ふ、ふざけんなっ!! 誰がそんな事、認めるかっ!! どうせ後ろで観戦しに来ている奴らが隠れてお前の代わりに魔術を行使しているんだろうっ!! だっておかしいじゃないかっ!! 魔術の成績がいつも底辺なお前が、例え低段位と言えども複数の属性の魔術を、それも無詠唱で行使できる訳がないだろうっ!!」

「……だせぇな。勝てないと分かると俺が不正していると疑い始めるなど、みっともないにも程があるだろう。それに、何のために審判がいるんだよ。審判が何も言わないという事は、俺は何も不正をしていないという事じゃないか。そんな単純な事すら理解できない程馬鹿なのか? お前は」

「そ、そんなの予め審判も買収しているに決まっているではないかっ!!」


 確かに、万年成績がド底辺の俺が急に複数の属性で魔術を無詠唱で行使し始めると誰でも不正を疑うよな、と思ってしまうだろうというのは理解できるし、コイツのそう思ってしまう気持ちも理解できる。


 そうでないと見下していた相手より自分が下という事になるので、くだらないプライドがどうしてもそれを認めたくないのだろう。


「まぁ、そういうんであればそうなんじゃねぇの? お前の中ではな。だが残念ながら現実はそう甘くはねぇんだよ。バカなお前に教えてやるが、お前がそうやって現実逃避をするのは勝手なのだが、現実逃避したらお前の想像している理想の世界に変わる訳でもないんだよな」


 なので俺はここで魔術を行使して心を折るよりも煽って更に歯向かってこさせようとする。


 そっちの方が負けた時の心へのダメージは大きいだろうしね。


「さっきから聞いていればふざけた事をぬかしやがって……もう許せねぇ。ここでお前を殺してでもお前にだけは勝ってやるっ!! 例えそれで試合に負けてでもなっ!! 炎魔術段位五【炎竜巻】っ!! これでもうお前は終わりだっ!! いくら身代わりの魔術で一度は助かるかも知れねぇが、炎の竜巻を消滅させない限り灼熱の炎でお前を焼き続けるっ!! この私を怒らせたツケは死んで払えっ!!」

「何が来るかと若干楽しみにしていたが、実際に行使した魔術がこれとは……下らんな。段位四までの魔術しか行使できないというルールを破ってまで行使した魔術がたかが段位五とは……舐めているのか?」

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