第173話 そのツケを今支払って貰う



 めんどくさいな、コイツ……。


 それが俺のコイツに対する感想である。


 そしてこういう奴というのは知能が足りないからこそ言葉で言っても理解できない上に自分が置かれている状況を客観的に見る事ができないので、暴力で分からせてやった方が手っ取り早いのである。


 何故暴力が必要であるのかと言うと、何が一番ダメなのかというと『そもそも客観的に見ようとしない』という事であり、そうなってしまう一番の要因がこの肥大しまくったプライドなのである。


 どうしてそのように言い切れる事ができるかというと、それは前世の記憶を思い出す前の俺がまさにそうであったからである。


 はっきりって自分を律する為のプライドであれば良いのだが、相手を見下す為のプライド等は豚の餌にもならないような、自分の足を引っ張る事しかしないゴミでしかないと今であればそう理解できる。


 しかしながら残念な事にその、相手を見下す為のプライドを持っている者はそのプライドが自分にとってのデバフでしかないという事に気付けない上に、自分の立場が揺らぎそうになるとまっ先にそのプライドを護る為に行動を取ろうとする。


 まさにゴミでしかないのだが、死ぬ事よりもそのゴミみたいなプライドを護ろうとする者が多い上に、当然そんな奴に『そのプライドを捨ててちゃんと客観的に周囲を見渡せ』と言っても聞く耳を持たないというのは道理であろう。


 故に、武力行使なのである。

 

 特に自分よりも弱いと見下している奴にボコボコにされたのとあっては、そのゴミみたいなプライドを護る為に屁理屈で目を逸らそうとしても『でも見下していた奴にすら勝てない自分がいる』となる訳で、言い訳の使用も屁理屈の言いようも無くなり、嫌がおうにも『俺は見下していたコイツよりも弱い』という現実を認めざるをえなくなる。


 そこまでしてやっと『もしかしかしたら自分は、自分が思っているほど凄くない人間なのかもしれない』と思うきっかけができ、その何の役にも立たないプライドを捨てて客観的に自分を見ようとし始める可能性が出てくるのである。


 と、いうのは二割本心であり、残りの八割は『俺がこいつをボコボコにして、自尊心を踏み潰して今までの鬱憤を晴らしたい』という感情が占めているのは秘密である。


「俺が今まで反抗してこないからと、お前には今まで俺に対して誹謗中傷を含んだ言葉を俺に聞こえるように良く呟いていたよな? そのツケを今支払って貰うとするか」

「まぐれで調子にのりやがってからこのゴミがようっ!!」

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