第172話 本当に残念だ



「は? 痛い……痛い痛い痛い痛い痛いっ!? なんだこれはっ!?」


 俺に足を払われ尻餅をついた相手貴族は、一瞬何が起きたのか理解できていなかったのか呆けていたのだが、ついでこけた衝撃による痛みが襲って来たのか、その痛みに耐えきれず地面をゴロゴロと転がり始めるではないか。


 開幕そうそうに尻餅もだいぶコイツの家名に傷をつけてしまうような展開であったにも関わらず、そこから更に痛みに耐えきれずに地面をゴロゴロと転がる始末。


 間違いなくこいつは後で親にこっ酷く叱られてしまう事だろう。

 

 怒られるだけならばまだ良いのだが、爵位を継げなくなったり、最悪家族の縁を切られて勘当される可能性もありえるだろう。


 それくらいには酷い内容であったと言えよう。


 だが、目の前のバカはその事実に気付いていないのか怒りで周囲が見えなくなっているのが、その憤怒の表情からも窺えてくる。


 まぁ、ここからコイツが親の爵位を継げるかどうかは、ここからの立ち回りと、俺に勝てるかどうかにかかっているのも確かであるので、見下して足元救われたのが原因であるのならば怒りの感情から本気で潰しにかかった方がまだマシなのかもしれない。


 そでも俺からすれば雑魚には変わりないので、初めから俺の事を見下さずに集中して対応していれば、例え俺に負けたとしても最悪の事態は免れたかも知れないのに……なんて事を思ってしまう。


 まぁ、だとしても俺の事を馬鹿にした時点でコイツには恥ずかしい負け方をさせる予定ではあったのでどの道同じ未来を辿っていた事だろう。


 早い話が調子にのらずに、変なプライドも持たず、相手を見下さなければこんな最悪な未来にはならなかったのにな。


 本当に残念だ。


「な、なんだその目は? 何でこの私よりも成績が悪い、というか学園の中でも底辺のカイザル君が、たまたま開幕私のミスで上手くいっただけだというのに、それだけでどうして私の事を見下したような目を向ける事ができるんだよっ!? 流石の俺も、もう許さねぇからな……。ここまでの恥をかかされたんだからそれ相応の報復はされるものだという事は理解できているのだろうなぁ?」

「あ? 報復? なんで俺がお前から報復をされなければならないんだ? お前が俺よりも雑魚だっただけだというのに? 恥の上塗りとはまさにこの事だな」


 どうやらこのバカは開幕に一発を貰った事はただのまぐれとでも言いたいのだろうが、まぐれではないとここはしっかりと分からせてあげるのが優しさであると言えよう。

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