第171話 お手本のように尻餅



 因みにこのランキング戦なのだが、参加人数が人数である為学園にある修練場をフル活用して行っている。


 そして、俺はマリエルと日替わりで俺の側仕えをしてくれている奴隷、舎弟っぽい令息と令嬢を引き連れて会場へと到着する。


「ふーん、逃げずに来たんだ。例年通り体調が悪いとか何とか適当に理由を付けて棄権すれば良かったものを、いちいち答えの分かっている試合をするという面倒くさい事をしなければいけないではないか。本当に、実力も無ければ頭も悪いのだな。これで公爵家の産まれだと言うのだから神もふざけた事をするものだ。しかしお前みたいなバカが公爵家を継ぐのだから、ある意味近い将来クヴィスト家が没落するのは間違いなく、資産を食い漁る事ができると思えば、我が家にとっては美味い話なのかもしれないな」


 そこには俺の対戦相手である男性が青色に輝く長い髪の毛をかき分けながらニヤニヤと笑みを浮かべて俺を見下し、喧嘩を売ってくるではないか。


 こういうバカが一人でもいなくなると思えば自然とやる気も出てくるというものである。


「言いたい事はそれだけか?」

「は? なになに? 言い返しちゃうのか? お前が? 武術も魔術も底辺のお前が? 笑っちゃうね」

「まぁいい、その喧嘩は買おう。 あと、俺が棄権していたのは勝てないからではなく面倒くさいからだという事を間違えるなよ?」


 とりあえず他に言いたい事はないのかと聞いてみると、煽る事はすれど言いたい事は無いようなのでコイツが売ってきた喧嘩は買う事にする。


 そのついでに棄権していた理由は面倒くさいだけだと言うと『ぎゃはははははははっ!!』と腹を抱えて笑い始めるではないか。


確かに、実際のところはコイツの言う通りなのだが、ぶっ飛ばせば嘘も真実となるのでわざわざ本当の事を言う必要も無いだろう。


「いくら何でもその言い訳は流石に無理があるぞ? カイザル君っ!! 今までは家の権力でどうにでもなってきたかもしれないのだが、今日は『権力だけではどうすることもできない』というモノがこの世にはあるという事を教えてやるよ」

「それは楽しみだな」


 そして俺達は修練場の真ん中まで来ると審判をしている教員が試合開始の合図をする。


「では早速その憎たらしい顔に蹴り技をお見舞いしてあげるよっ!! アゴッ!?」


 開始の合図が聞こえた瞬間、相手は一気に俺へと距離を詰めると顔面目掛けて蹴り技を出してくるだが、あまりにも遅すぎるので軸足になっている方を掬うように足で払ってやると、お手本のような尻餅をつくではないか。

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