第170話 メリットがある方を選ぶ



 

 目立たないという事に焦点を当てるのならば一回戦負けが妥当ではあるものの、それはそれで『平穏に暮らしていく』というが目標である場合、逆に先程みたいなバカに絡まれる機会は多く、実際に今までバカにされて生きてきた事を考えるとここらで周囲に『俺には敵わない』という事をその小さな脳みそに刻み込む必要があるだろう。


 なにも実力を全て見せるという訳でもない上に『たかだか学生しか出場しないランキング戦レベル』でもあるので、このランキング戦で勝利したからと言ってどうなることでも無いだろう。


 これが、近衛騎士や宮廷魔術師、帝国七騎士たちが出場する大会等であれば話は別ではあるのだが……。


そう考えると学園内でのランキング戦で勝利する事と一回戦で負けた事を想定してみると、ランキング戦で勝利した場合のメリットは鬱陶しい馬鹿共から絡まれる確率が減る、デメリットは不正を疑われる事であり、一回戦負けした場合のメリットは今と変わらない事であり、これはデメリットも同じである。


そう考えると勝利してもしなくてもどうせ色々と陰口を言われるのであればまだメリットがあるランキング戦で勝利する方を選んだ方がマシであろうし、実績を作って行けば周囲の戯言も少なくなっていくだろう。


負けて現状維持よりも長期的に見て勝利した方が学園生活を過ごしやすくなるのは目に見えて明らかである。


何もランキング戦で優勝するとか言うのでもあるまい。そこそこでのレベルまで勝利すれば良いのだ。


 それこそ、宮廷魔術師や帝国七騎士のメンバー、近衛騎士等にスカウトされないギリギリのラインまで勝利してから負ければ良いのである。


 まぁ、公爵家を継ぐであろう俺を宮廷魔術師や帝国七騎士のメンバー、近衛騎士にスカウトするような事はほぼほぼ無いとは思うのだが、過去も現在も貴族でもありそういったモノにも所属している者はいるので低確率ではあるもののゼロではない以上そこは目立ちすぎるのも良くないだろう。


 例えスカウトされたとしても領地の経営やら何やらで忙しくてそこまで手が回らないと適当に理由を付けて辞退する旨を伝えれば向こうも引いてくれるだろう……多分。


 何はともあれ、メリットがある方か、メリットがない方か選べと言われればメリットがある方を選ぶのは当然のことであろう。


 そこまで考えた俺は、とりあえず四回戦まで勝ち上がれば適当に負ければ良いかと思うのであった。





 そしてランキング戦当日、あの日から何故か俺の舎弟のように振舞い始めたモブ貴族四名を引き連れて俺は試合会場へと向かっていた。

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