第168話 嫌いだった
◆とある貴族の次女side
カイザルが嫌いだった。
弱くて知能も低く、そして勉強もできない癖に公爵家に産まれたってだけで私たちの事を見下すその視線が何よりも嫌いだった。
そして、初めは聞こえないようにカイザルの悪口を同じくカイザルの事を嫌っている者と盛り上がった。
幸いカイザルの事を嫌っている者は学園全員と言っても過言では無く、悪口を言い合える仲間を見つけるには苦労しなかった。
その悪口は少しずつ声が大きくなり、いつしかカイザル本人に聞こえるような声の大きさで、本人が目の前に居ようともお構いなしに堂々と言うようになった。
ハッキリ言ってそのころにはカイザルの事を公爵家の息子とは思っておらず心の底からバカにするようになったし、カイザルは相変わらず魔術も武術も筆記も全て学園底辺レベルであるのに、無駄に偉そうに学園を過ごしていたのだから話のネタとしては最高であった。
そう、私たちにとってカイザルはいつの間にか怖がる対象ではなくなっていたのである。
カイザルが公爵家の産まれであるという事は変わっていないにも関わらず。
その事を、カイザルが公爵家の産まれであるという事を思い出させてくれたのは、カイザルが学園中から見下され始めていた時である。
プレヴォがカイザルの婚約者を奪うという暴挙に出たのだ。
普通であればそんな事をすればただでは済まないだろう。
しかしながら婚約者を奪った本人であるプレヴォを含めて全員がこの時カイザルの事を舐めていたと言えよう。
カイザルであればバカにしても問題ない玩具である、と。
しかしながらカイザルは玩具ではなく、腐っても公爵家の息子であった。
そしてプレヴォがしでかした婚約破棄の内容もヤバかった。
当然カイザルはプレヴォに対して正式な形で制裁を加えた。
当たり前だ。
貴族、それも公爵家の婚約者を奪ったのだ。それも不正な方法を使って。
普通であれば死罪でもおかしくない所を、結果廃嫡で終わったのは間違いなくカイザルが間に入って刑を軽くするように告げたことが窺える。
そんな事件があったにも関わらず私たちはどこか他人事のように思っていたのかもしれない。
そして今日、私はあんな出来事があったにも関わらず、いつもと同じようにカイザルに対しての嫌味を話してしまったのである。
ただいつもと違うのは、カイザルはいつものように無反応であったのだが、今日連れてきたヨハンナとかいう側仕えが私たちの会話に反応してしまったという事である。
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