第166話 誰に謝罪をするのか
そう俺が言うと、ひそひそと陰口を言っていた奴らは『こいつは一体何を言っているんだ?』というような表情を俺に向けてくるではないか。
「本当に分からないのか? まさかお前たちがここまでバカだとは思わなかったな。普段平民の事を馬鹿にしているようだが、お前たちの方が平民よりもバカだと本能的に気付いているからこそ馬鹿にしてしまっているんじゃないのか?」
「あ? どういう事だよ? とりあえず俺たちはお前に謝罪したそれで良いだろうが?」
しかしこいつらは本当に理解できていないのか『カイザルに謝ったのだからこれで終わり』だと言うではないか。
馬鹿でも分かるように伝えた筈だったのだが、こいつらは俺が想像していた以上に知能が低かったようである。
というか『俺ではなくヨハンナに謝罪をしろ』と言ったにもかかわらず理解できていない訳がない。
恐らく理解しているのだが『奴隷ごときに謝罪はしたくない』と思っているからこそあえて馬鹿なふりをして俺の言葉の意味を理解できない体でこの場を流そうとしているのであろう。
そんなゴミのようなプライドを護ったところでどうなるのだ? とは思うのだが貴族というのはそのゴミのようなプライドで飯を食っている者も少なくないので、爵位が上である俺に謝罪するのは構わないが、奴隷のヨハンナに謝罪をしている所を誰かに見られた場合、その噂が一気に広まりでもしたら貴族として生きて行けなくなる可能性もあるのだろう。
それならばまだ良い方で、周囲から『奴隷に謝罪した家』という噂に耐えきれずに自殺する者も出る家も多いだろう。
それだけこいつらにとってプライドは大事であり『誰に謝罪をするのか』というのは人生に関わる事である。
その事をちゃんと理解していなかった俺にも落ち度はある為、今度はしっかりとバカでも分かるように説明してあげる事にする。
「まさか本当に分かっていないのか? お前たちが心無い言葉で傷つけたのは俺の奴隷であるヨハンナだろう? だったら謝罪をするのは俺ではなく俺の奴隷であるヨハンナだよなぁ?」
「そ、それは……っ」
「選ばせてやるよ。ここで無視して公爵家に喧嘩を売るのか、ヨハンナに謝罪をして貴族とプライドを捨てるか。前者であれば容赦はしない。しかしながら後者であれば自分たちで挽回できる機会はある。どうする?」
「あ……あの……その……ほんの出来心というか、なんというか……流石に奴隷相手に謝罪はできないというか……」
「お前たちは平民から馬鹿にされた時に、その平民が『出来心だったから許してくれ』と言ったら許すのか?」
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