第160話 いつか足元を掬われてしまう
え? これって俺が思っている以上にヤバいのでは?
とは思うもののなってしまったものを今さらとやかく言ったところで過去が変るわけでもない訳で、今すべき事はこれからどのような対策をしてくかという事である。
「ふむ、さすがカイザルの奴隷だなっ!! 息子が優秀ならばその奴隷もまた優秀である……か、奴隷は主人の鑑とは良く言うのだが、まさにその通りではないかカイザルっ!! まさか王国へ我々の息がかかったものを、それも貴族として間者を送るとはっ!! 流石我が息子であるっ!!」
これからどうしたものかと考えたのだが、とりあえず一旦お父様に報告をした方が良いと俺の直感がそう告げてきたので今回の件を報告すると、いつもの如くめちゃくちゃ褒められてしまう。
というかお母様もそうなのだが、この二人には隠し事はせずに行動した方がよさそうであるというのが俺の今の認識である。
俺のスローライフ計画の邪魔をしたり足を引っ張ったり、金の無心をしてきたり、親の理想を押し付けてやりたい事を制限されたりしない限りは伝えるようにしている。
というか隠しても無駄な気がするので『両親に知られているのではないか?』とやきもきしてしまうくらいならば話してしまった方が俺の精神衛生上まだマシだろう。
「褒めていただきありがとうございます。 しかしながらお父様、俺はこの娘をスパイにするつもりはございません。それによって面倒事も起こしたくはないので……平穏で過ごせるのであればそれで良いのです」
「ふむ、カイザルの言う事も理解できる。しかしながらカイザルよ、物事を自分の感情や思考、理想だけでとらえるのは非常に危ないことであると言っておこう」
「……と言いますと?」
「カイザルがそう思い行動するのは良いのだが、その娘はそうは思っていないという事である。間違いなくカイザルが『王国の情報をくれ』と言えば喜んで包み隠さず伝えるだろうし、その来るべきその日の為に情報収集は行うだろう。また王国側がこの事実、帝国貴族が王国貴族を奴隷にした事を知った時、まずスパイだと断定するだろうという事だ。そこにカイザルがどう思っているか等は関係ない。事実を知った時に無数の答えがあり、どの答えを選択するのかはその人個人の立場や環境で変わるという事だな。聡いカイザルの事だ。ここまでは理解しているとは思うのだが、だからこそこれからはそんなつもりは無いにしろ『スパイを王国に送り込んだ』という認識を持って行動をしていかないといつか足元を掬われてしまうぞ? 敵は王国だけではなく帝国内にもいるのだから」
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近況ノート(限定)にて161話(ストック分)更新いたしました。
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