第157話 実験しておかないと勿体ない
一体どうやってここに現れたのか分からないのだが今俺の目の前にはエリスの姿がそこにあるではないか。
その姿を見て俺は驚くと同時に『やはりな』と、エリスがここに現れた事を受け入れる事ができる自分がいる。
この家に戻って来るまでにつけられているかどうか細心の注意を払って帰って来たつもりであるし、もしつけて来たのであればこんな何も無い空間から現れる必要は無いのである。
普通に玄関から入ってくれば良いだけだ。
当然使用人にはエリスを捨てている事を伝えているので門前で止められてしまうだろうが、この程度で止まるエリスでもあるまい。
あのエリスの事である。おそらく帝国からここまで何らかの魔術を行使して一瞬で移動したに違いないし、そちらの方がしっくりくる。
そんなエリスが俺に対して邪魔をしなければ何もしないと言っていたので、それを聞いた俺は激しく首を縦に何度も振って返事をしたあと、自室へ荷物を取りに帰るのであった。
◆エリスside
「何事ですかっ!?」
「あら、来るのが遅かったですわね、執事のゼス」
「……これは貴方がやったのですか? 返答によっては──ぐぎゃっ!?」
「あぁ、もうそういうやりとりは面倒くさいからやらなくていいわよ。どうせゼスレベルであれば今のわたくしには勝てないのは分かりきっているんですもの。そもそも元父親や元母親を含めたわたくしの元家族が、オート機能で常時展開している防護結界すら一枚も破壊することができなかったんですもの。元父親よりも弱いゼスにこの結界を破れる訳がございませんわ」
わたくしは、元家族との戦闘(戦闘と呼べる程の者でもないのだが)で起きた音を聞いて駆けつけて来たでのであろう執事のゼスを、部屋に入って来た瞬間に土魔術段位五【グラビティー】を無詠唱で行使して、そのままゼスを床に縫い付ける。
「それにしても拍子抜けも良い所ですわね。あんなに私に対して偉そうな口を叩いていたにも関わらず、攻撃一つ当てる事もできなければ、わたくしの行使した攻撃魔術一つで倒れてしまうだなんて」
そして今わたくしの目の前には両足を【グラビティー】で潰された家族が床に転がっていた。
「しかしながら、さすが土魔術段位五の魔術ですわね。そもそも目に見えない攻撃魔術の時点で驚異的な上に広範囲かから狭い範囲に絞ったりと攻撃範囲も自由自在……足だけ潰す事も出来ればゼスのように立ち上がれなくすることもできる……反則級の強さですわね。これで段位五であるのならば、これ以上の段位はどれほどの威力と効果なのかしら……。見てみたいと思わないかしら? やっぱり実験台がいるときに実験しておかないと勿体ないですわよね?」
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