第156話 恩知らずな息子



「それでがっかりするのならばそれで良い。 とにかく俺はあの化け物にもう金輪際関わりたくはないんだよ。お前達がエリスからの伝言を聞いても、この場から逃げるという選択を取らないであろう事は容易に想像できる。俺があの時エリスに対して舐めてかかったようにな。だが俺は一応警告をした。後は好きにすればいい」

「ぎゃはははははっ!! 流石に冗談キツイですわ、お兄様っ!! そもそもあんなゴミクズに負けただけではなく子孫を作れない身体にまでされて良くこの家に戻って来れたわねっ!!」

「ホントそうだよ兄貴っ!! アイツが居なくなった後の練習台としての代わりは次から兄貴で良いよなぁっ!?」

「こら、エーリカ、ドルグお口が悪いですわよ。でも、エーリカの言っている事には概ね同意だわ」

「俺もエマ姉さんに同意だね。妹も弟も口は悪いが、それ以上にお兄様がまさかここまで使えないとはね」


 一応家族のよしみとして最後に警告はしたものの、弟達も妹達も、誰一人としてエリスを警戒するような者はいなかった。


「お前には才能があると思っていたのだが、それはどうやら俺の勘違いだったようだ。、残念だよ我が息子オルグ……いや、ゴミとなった赤の他人よ。我が家にはゴミは要らぬ。即刻この家から出て行け」

「ほんと、恩知らずな息子だわね……。わたくしの視界にも入れたくないので早く出て行きなさいっ!!」

「あぁ、そうさせてもらう。ハッキリ言ってお前たちにそう言われたから出て行くのでなくて、エリスがここに来ると思っただけで一秒たりともこの場に居たくないんだよ。今も恐怖で手足が震えてまともに歩く事もできないくらいだ。とりあえず、両親の二人には俺をここまで育ててくれた事に関してだけは感謝している」


 そして父親であるマルグ、母親であるエリザベートが俺に向かってこの家から出て行けと言うので、俺はその言葉に歯向かう事もせずにこの家から出て行く……いや、エリスが来るまでに、これから一人で生きていくのに必要最低限の物を自室から持ち出し逃げる事にする。


「あら、ちゃんと伝言は伝えてくれたようですわね」

「ひ、ひぃっ!?」


 そうと決まったのならばこの家に長居する必要はない。一刻も早く、あの化け物が来る前にここから離れなければ、と思い自室へと向かおうとしたその時、聞き覚えのある、そしてもう二度と聞きたくないと思っていた声が聞こえてくる。


「あぁ、オルグはわたくしのお願いをちゃんと実行してくれたから何もするつもりは無いですわ。出て行きたければこの部屋から出ても良いですわよ。わたくしが知らないような土地に逃げようがどうしようが、わたくしに対してちょっかいをかけない限りは何もしないですわ」

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