第155話 あの地獄よりかは遥かにマシだ



◆オルグside



 一体アイツはどうやってあんなぶっ壊れた魔術を行使できるようになったのか……。


 家を追い出される前からあれほどの力を持っているなどまずあり得ない。


 ハッキリ言って、あれほどの力があれば一人で国を堕とせると言われても信じてしまいそうなレベルであった。


 ただ言えることがあるとするならば、金輪際エリスには関わってはならないという事である。


 ハッキリいって命が何個あっても足りないだろう。


 先程の決闘に関してもエリスが見たことも聞いたこともない自動回復魔術を俺に付与していなければ、とっくの昔に死んでいただろう。


 そもそも、失った部分まで回復させる魔術など聞いた事がない。


 エリス曰く『すでに傷口が塞がっていたり、病気等に関しては治す事はできない』との事なのだが、それが戦場であれば頭さえ守れば死ぬ事が無い狂戦士のできあがりではないか。


 しかも、行使できる魔術はどれも一級品。


 見たことのない魔術ばかりではあったものの、それら全てが魔術段位三以上である事は間違いないだろう。


 それは最早国家魔術師レベルか、それ以上。英雄と謳われているランクS冒険者にも匹敵するのではなかろうか。


 あの決闘の事を思い出すと未だに恐怖で指の震えが止まらなくなる。


 ギルドライセンスの剥奪? その程度で見逃してくれるのであれば喜んで剥奪されよう。帝国から出て行く事も条件であれば今すぐにでも出て行こう。家族に伝言を伝える事も条件であればいくらでも言ってやろう。


 アイツと再度決闘をするくらいならば、その程度の事であればいくらでも受け入れるし、行動しよう。


「このバカ息子がっ!! お前は何を言っているのか分かっているのかっ!!」

「分かっております。そして俺の言っている事を受け入れられない事も。しかし俺は確かに伝えましたからね?」

「何が『エリスが復讐をしにく来る』だっ!! そしてお前はエリスに負けてのこの事この伝言を伝えろと命令されて帰って来たというのかっ!?」

「はい、その通りです、お父様」


 その結果、家族から見下された視線を向けられ、父親から叱責されるのも甘んじて受け入れよう。


 あの地獄よりかは遥かにマシだ。


 死ぬ恐怖、あれはもう味わいたくない。


 何度も何度も何度も何度も、死んだと思った。


 その度に死ぬ恐怖と生きている喜びを味合わされたのだ。


「お兄様は、あんなクズに負けるくらい弱かったんだ……正直がっかりだよ」


 そんな俺に次男であるハミエルが明らかに見下したような表情と声音で話しかけて来る。


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伝言を伝えるは重複表現ではないようなので(名詞+動詞の為)このままで行きます(*’▽’)ノ

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