第153話 それと復讐は別ですわ



「…………はえ?」


 そして、良く分かっていないオルグに向かってわたくしは、カイザル様から頂いた数多の魔術を一つ一つ行使してはその効果や威力を確かめていく。


「あぐぅ、や、止めてくれっ!! 俺が、俺が悪かったからっ!!」

「は? 貴方はわたくしがそうやってお願いして止めた事はあったのかしら? わたくしの記憶には止めてくれた事は一度も無く、むしろ更に笑いながら逃げまどうわたくしに対して魔術を行使し続けていた記憶しかございませんわよ? そんなあなたが、何故逆の立場になった時に『止めてほしい』などと言えるんですの? それはちょっと虫が良すぎるとわたくしは思いますわね。それと、わたくしは優しいのであの時の貴方とは違ってちゃんとダメージを喰らっても頭さえ大丈夫ならば再生できるようにリジェネレートを施しておりますわ。だから安心してわたくしの攻撃を喰らってくださいまし。例え風魔術で四肢がちぎれようとも、炎魔術で全身が丸焦げなろうとも、首から下が闇魔術に食われようとも、土魔術で作られた金属によって全身を貫かれようとも、頭の中、脳さえ無事であれば綺麗に再生いたしますわ。でも、さすがに脳が潰れてしまったら……再生はするとは思うんですけれども、記憶まで再生するかどうか分かりませんわねぇ」


 嘘である。


 例え脳が潰れようとも記憶が残った状態で再生される。


 しかしながらわざわざそれを教えてやる必要もなければ、むしろその事を意識して恐怖の沼でのたうちながらわたくしから逃げて欲しい。


 わたくしにはオルグに復讐できる機会は今日しかないのである。


 であれば長年いじめられてきた分をこの一回に凝縮して返して差し上げましょう。


「ぎゃぁぁぁぁああっ!! いやだいやだいやだっ!! 痛いっ!! 熱いっ!! 寒いっ!! 嫌だ嫌だ嫌だっ!! 俺が俺でなくなるだなんて嫌だぁああっ!! 頼むから止めてくれよっ!!」

「汚い鳴き声ですわね……。しかしながら、こんな事をして何が面白かったのですの? わたくしには弱い者をいたぶって痛がる姿を見るのは、何が楽しいか分かりませんわね。その点で言えばあなた方家族と同じ価値観を持たなくて良かったと言えますわね」

「だ、だったら止めて──」

「それと復讐は別ですわ」

「ひぃっ!? ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!!」


 そしてこのあともう数十分ほどいたぶった後、意識が大分薄れて、叫び過ぎて枯れた声で謝罪しか言えなくなったオルグに施しているリジェネレートを解き、股間を刈り取って質の悪い回復魔術を施してやる。

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