第149話 反撃を喰らう事も覚悟の上ですわよね?



「……とりあえず、殺傷能力のある魔術を行使された事、そして明確に殺すぞと言われた事、その他誹謗中傷、それを立証できるだけの目撃者が大勢いる事……ここまで揃っているのですから、ここでわたくしがやり返したとしても正当防衛として処理されてしまいますわね」

「あ? お前ごときゴミ虫がまさか俺に歯向かうだけではなく、勝てるとでも思っているのか?」


 なのでわたくしは一度『次は正当防衛を取らさせてもらう』という旨をオルグへ伝える。


 普通であれば、わたくしが例えオルグに勝てないとしても、これだけの野次馬がいる中では明らかに自分が不利な状況である事に気付いてこの場を離れるものであるのだが、オルグはむしろその逆でさらに激昂し始め、わたくしを睨みつけてくるではないか。


 その表情からは『この場を離れる』という選択肢は無く『目の前のムカつく妹に痛い目を見せたい』という思考しか頭にない事が窺えて来る。


 どうやらわたくしの兄は、想像以上のバカであり、そして想像以上にわたくしの事を見下していたのだろう。


「むしろ逆に何故貴方みたいな雑魚がこのわたくしに勝てると思っているのかしら? 頭もバカだからその事に気付けないのは、少しだけ可哀そうではありますわね」


 なのでわたくしはさらにオルグの事を煽る。


 オルグが怒れば怒る程、きっと負けた時の衝撃は大きくなるだろうから。


「そこまで言うならもう許さねぇ。腐っても家族のよしみで命だけは取らないでおこうと思っていたが、この俺様をここまでコケにしやがった奴は生かしておけねぇ。殺してやるよ」

「そうやってできもしない事を口にして生きるのは、わたくしどうかと思いますの。流石にダサすぎますわね」

「殺す殺す殺す殺す殺すっ!!!! お前だけは絶対に殺してやるっ!!」


 そしてオルグは先程魔術が無効化された事を覚えていたのか、怒りで頭が埋まっているであろうに、その事を忘れる事無く、もしくは本能からくる判断か、とにかくわたくしの頭目掛けて回し蹴りをしてくるくらいには戦闘センスは多少なりともあったようである。


 なのでわたくしも蹴り技でオルグの回し蹴りを下から上に弾き返してやると、バランスを崩したオルグはそのまま尻もちをつきながらコケてしまう。


 当然ここでわたくしの攻撃が終わる訳も無く、振り上げた足をそのまま尻もちをついているオルグの股間へ思いっきり踏み抜いてやる。


「ぎゃぁぁぁああああああああっ!!!!」

「あらあら、お漏らしまでしてしまうなんて……汚いですわね。ですが、だからと言ってわたくしの攻撃がこれで終わると思わないでくださいまし。貴方はわたくしを殺すつもりで攻撃してきましたわ。当然敗れた時はそれ相応の反撃を喰らう事も覚悟の上ですわよね?」

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