第147話 清々しい気持ち
そもそもこの家族はあれほど『魔術に長けた一族』だと豪語していたにも関わらず、その実力はカイザル様がママゾンストアでくださった『魔術初級パック』に入っていた魔術程度のものしか扱えていなかったと知った時は、わたくしの中で元家族の呪縛から吹っ切れたのを今でも鮮明に思い出せる。
あの頃は超える事の出来ない巨大な壁のように感じていたのだけれども、今では地面に落ちている木の棒程度にしか感じない。
「お前、いつからそんなに偉そうな態度を俺に取れるようになった?」
そしてわたくしの態度が気に入らないのか、オルグは怒りの表情を隠す事もせず、むしろ『俺は今怒っているんだぞ』というのをわたくしに伝えるように、わたくしの態度が偉そうだと言ってくる。
「わたくし、貴方達家族に捨てられて気付いた事があるんですの……」
「あ? 自分がいかに使えないかという事に捨てられてやっと気付けたのか? 本当にお前は使えなければ頭も悪いんだな」
「いえ、そうではございませんわ。むしろその逆で、如何にわたくしを捨てた家族が、ちっぽけな存在であり、恐れる必要のない存在であるという事に気付くことができたという事ですわね。そんなちっぽけな存在である貴方達元家族に対して怯える必要などないではございませんの。それこそ阿保らしいですわ。それに、今のわたくしからすれば自分たちがちっぽけな存在であるという事に未だに気付けていない貴方達元家族が滑稽に見えて仕方がないですわね」
「……エリス……お前、そこまで言うんだから覚悟できているんだろな?」
とりあえず何も分かっていなさそうな元兄であるオルグへ今わたくしが元家族についいてどう思っているのか分かりやすく説明してみると、想像通りオルグは怒りで顔を真っ赤にしながら『覚悟はできているのか?』などと言ってくるではないか。
「覚悟……それはアナタの方ですわ。自分の存在がちっぽけな存在であると客観的に見る事ができずにそうやって喧嘩を売っていれば、その内痛い目を見ますわよ? まぁ、わたくしが言ったところで自惚れている今のままででは何度言っても無駄だとは思いますけれども、元家族のよしみで一応警告はいたしますわ。雑魚が調子に乗らない方が良いですわよ?」
少し前までは、元兄オルグに向かって上から目線で『雑魚』だと言い切る事など言えなかっただろう。
そして、今わたくしはオルグに向かって『雑魚』だと言い切った事により、元家族によって抱く事の出来なかった自信を得る事ができ、目の前の景色が広がったような、そんな清々しい気持ちが胸の中に広がって行く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます