第146話 わたくしには理解ができない



 そんなかけがえのない宝物時間を台無しにする声が聞こえてくるではないか。


 その一生聞きたくない、そして生きてい居る国が違うので一生聞く事もないだろうと思っていたにも関わらず、こうして聞こえてくる声に、わたくしの髪の毛ドリルも『ギュルン……ギュルン……』と元気無さげに回転している気がする。


 まぁ、ただの髪型なのでご主人様によって得る事ができた知識の中にあたドリルという物にわたくしの髪型が似ているだけなので実際に回転している訳ではないのだが……。


「おい、テメェ聞こえているんだろう? 無視してんじゃねぇぞボンクラがよぉっ!! 俺様の魔術の練習台のお前が、俺様の言葉を無視するなんていい度胸じゃねぇかよっ!! おいっ!! 聞いているのかっ!?」

「そんなに大きな声を出さなくとも聞こえておりますわよ……。というか、わたくしとは家族の縁を切ったのでしょう?だというのに、何故わたくしにいちいち声をかけて来るのかしら? わたくしにはそれが理解できませんわね。とりあえずわたくしは貴方、オルグ・ド・ファングに対して何の興味も無ければ話す事も何もないので、わたくしにかまわないでくださるかしら?」


 そして、反応すれば面倒くさい事になる事は目に見えているのでそのまま無視し続けているのだが、それが逆にファング家の長男であるオルグの琴線に触れてしまったみたいである。


 こうなると感情のまま暴れ始め、わたくしに危害を加えるというのがわたくしの元家族達である為、このままここで暴れられて冒険者ギルドに迷惑をかけてしまうのも申し訳ないので、一応反応してあげる事にする。


 そもそもわたくしをいたぶり続けた挙句に他国へ捨てた者が、どうしてわたくしがあの時の様に反応してくれるのだと思えるのか、わたくしには理解ができない。


 そういう点でもわたくしはこの男、そして元家族に舐められていたという事なのだろう。


 しかし、奴隷の仲間たちとカイザル様の力になるべく切磋琢磨している今ならば分かる。


 当時は力の差が開きすぎており逆立ちしても勝てないと思っていたのだが、今は逆に逆立ちしても勝てるくらいにはこの家族は既にわたくしの敵ではないと。


 故に、今のわたくしからすればこの家族には興味が一切無いのだ。


 まだわたくしよりも強い、または光る何かがあるのならばそれらを吸収する為に相手をする意味は少なからずあったのかも知れないが、それすら無いのであればこの家族を相手にする時間が無駄でしかない。


 

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