第144話 どんなに足掻こうが手に入らないもの
それほどの覚悟を持ってカイザル様の奴隷へと成ったのだが、蓋を開けてみればわたくしの予想していた展開とは全くの真逆であり、逆にその環境を受け入れる事に時間がかかってしまう程であった。
もしわたくしが想像していたような扱いをされていたのならば、予め覚悟をしていただけに受け入れる事は意外と早くできていたのかもしれない。
しかしながら実際は、カイザル様はわたくしたち奴隷に対してまず最初に欠損箇所や病気などを治してくれ、その後に温かなお湯で身体を洗わせていただき、奇麗な寝床まで用意してくれていたのである。
さらには、カイザル様はわたくしたち奴隷に一切手を付けようとはしなかった。
この事に関しては不満を漏らすものも多く居たのだが『奴隷がご主人様に相手してもらえるのは高望みである』という認識を皆少なからず持っている為、そこまで問題にはなっていない。
その後に一度全員見た事もない『ヘッドギア』という物を頭に付けて知識や教養などといったモノを与えてくださった。
それで得た知識と教養の中には本来であれば貴族でなければ手にできない物も多く含まれており、私達奴隷の中には涙を流しながら喜ぶものも少なくなかった。
勉強したくてもできない、教養を得たくてもどう身に付ければ良いのかも分からない、それらが無いから今の自分の境遇に堕ちてしまったのだ。しかしながらそれらは欲しいと言っても得られるものでもなく、お金を出しても買えるものではない。結局は産まれた時の環境によるものが大きく、どんなに足掻こうが手に入らないもの。
『知らない』という事はそれだけで生きづらいものであるというのが、彼女たちの反応からも痛い程伝わってくる。
そう思っている者は多く、ご主人様に拾われてからまだ少ししか日数は経っていないにも関わらず心から崇拝するものも現れ始めた程である。
それだけではとどまらずに、習得したい魔術やスキル、その他別途欲しいものがあれば、申告してカイザル様が許可を出せば頂けるという、普通ではありえない好待遇に最初は『いくら何でも奴隷に良くし過ぎではないか』とも思ったし『そもそも魔術やスキルを習得って意味が分からない』と、どれいであり、それら待遇を受けられる立場であるわたくしがそう思ってしまうくらいには好待遇過ぎた。
その為わたくしは『さすがにこれはやり過ぎなので、他に何か狙いがあるのでは?』と勘ぐってしまうのだが、その理由は直ぐに分かる事となる。
それは死の森での重要施設や重要人物の護衛任務である。
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