第138話 正義の鉄槌
「えぇ、むしろここまでしてくれたのですから文句など当然ございませんし、これ以上の事を要求するなど恐れ多いです……っ」
そして我は、この後少しだけ世間話をしてから別れる。
この男の息子は、恐らく親の気持ちも分からず、自分の置かれている立場すら理解できずにまた同じような事をするだろうから、定期的に現状を調べる要注意人物リストへと入れてある。
もしバカをした息子の目を覚まさせたいのならば、せめて爵位を落すくらいの罰を受けるべきであるのだが、あの男は『罪はできるだけ軽くしたい、息子も次は無いと信じたい』と、両方とも得ようとしているその傲慢さを、本人自身気付いてなさそうである。
だが、自分の子供だけは無条件で信じたい、子供の将来の為に爵位も維持したいと思ってしまう親心も理解できる為、少しばかり複雑な気分である。
それはそれとして今回の事件は確かに痛手ではあったものの帝国側の怠慢である事を窺え、組織が腐りきる前に膿を出し切り今一度身を引き締め、立て直す事ができただけではなく、その膿も捨て駒として手に入れる事ができたという点では、現時点ではマイナスであるが長い目で見ればプラスであろう。
まったく、クヴィスト家には大きな借りを作ってしまったようだ……。
とりあえず、今回の作戦に付き合ってくれたリリアンヌが提示した褒美である、妹の治療費代でできた借金の返済も代わりにしなければな……。
そう思うと我は深いため息を吐くのであった
◆プレヴォside
「いやっ!! やめてっ!!」
「あ? 俺に美人局をしたお前が、何でそんな被害者ぶった表情で叫ぶんだ?」
俺は今出会ったばかりの女性に馬乗りになり、止めてと言われてもその顔面を殴り続けていた。
その女性の横には心臓部分に穴が空いた男性の死体が三体横たわっている。
少し前に声をかけてきた女性と宿泊施設までついていくと、屈強な男たち三人に囲まれてしまったので、正当防衛として手始めに目の前で立って威圧してくる男性の心臓目掛けて手刀の形で突き刺した後、握りつぶすと、その要領で左右にいる男性たちも先程殺した男性同様に、何が起きているのか理解が追い付かず呆けている内に心臓へ自らの手を突きの要領で突き刺して握りつぶす。
そして、その後に恐怖の表情で俺を見つめながら地べたに尻もちをついて排泄物を漏らし始めている女性の胸を軽く蹴とばして仰向けにさせると、そのまま馬乗りになって殴る。
そう、これはあくまでも正当防衛であるので、むしろ俺が行っている行為は次の犠牲者を産まないという点で見れば正義の鉄槌でもあるのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます