第137話 思わず口元がにやけてしまう
「ふむ、そんなにカイザルは凄かったのか……。実際にカイザルと一瞬ではあるものの戦ってみたお前から見てカイザルはどれほどの実力を持っていると思う?」
「そうですね……恐らくランクA相当は間違いなくあると思いましたね。というか、勝てるとさえ思えなかった。ランクSと言われても信じてしまいそうな程です」
「そこまでとは……。やはり衛兵やロレーヌ家の娘の証言も信憑性がかなり高くなったの。疑うつもりはないのだが、あまりにも資料や噂と違うので疑問ではあったものの、お主のお陰で一つ、謎が解けてスッキリしたわい」
ここ最近カイザルの周りで聞こえて来る評判が、今までとは真逆であった為少し強引ではあるものの我が間近で確認できる場所でカイザルの真の姿を垣間見える策を講じてみたのだが、その結果はカイザルの評価を見直さなければならないという答えとなった。
恐らくカイザル自身は『有象無象に囲まれているのならば他の人、特に皇帝などに見られる事は無いだろう』とでも思っていたのだろうが、流石に全て我が仕込んだものであるとは気付けなかったようだ。
それにしても、まさか現役から退いたとはいえランクA評価のこいつよりも高い能力を垣間見せてくれるとは……。
それが例えその一瞬、たった一撃であったとしても『普段から鍛錬をしなければこの結果にはならなかった』だろう。
すなわちカイザルは今までバカなフリをしていた裏では並々ならぬ努力を人知れずしてきていたという事であり、そして今まで表に出てこなかったという事は、努力して得た力を自分の私利私欲のために使用しなかったという事でもある。
これは思わぬ掘り出し物を見つけたなと、我は思わず口元がにやけてしまう。
しかも親の持つ爵位は公爵であり、カイザルがその爵位をゆくゆくは継ぐという事でもあるので娘の婚約者としても申し分ない上に未だに悪評が付きまとっているので現時点で我以外に娘の婚約者として唾を付けている親は見受けられない。
「それで、皇帝陛下……」
「どうした? 何か聞きたい事があるのか? もしくはカイザルの事で他に言わなければならない事でもあるのか?」
「いえ、これで我が家の処罰は終わりと見て良いでしょうか?」
「あぁ、その事か。作戦が失敗しようが成功しようが今回の作戦をしっかりと実行さえしてくれれば、今回お主の息子も衛兵として所属していたにも関わらず上に報告せずに甘い汁を吸っていた件については
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