第131話 生意気にも程がある


 

こうなったら何が何でもカイザルの所まで行き、わたくしの美貌と完璧な肉体美で誘ってアイツの化けの皮をさっさと剥がしてやるわっ!!


 流石に大勢の貴族が集まっている場所でカイザルの化けの皮が剝がれてしまえばお父様もわたくしとカイザルの婚約を取りやめになるだろう。


 既にお父様からは『自分の立場を理解して積極的にカイザルへアピールしようとしている』と思われているので今更カイザルを追いかけるのを辞めた所でその勘違いを正さない限りは意味がないだろう。


 それであるのならば、カイザルの化けの皮が剝がれるように行動した方が何もしないよりかは何倍も良い。


「あ、あのっ!! 待ちなさいっ!! カイザルっ! 何で逃げるのよっ!! わたくし、何かしでかしたのでしたら改めますので言ってくださいなっ!!」


 しかしいくら追いかけようと、声をかけようともカイザルはまるで私の姿や声に気付いていないような雰囲気でのらりくらりと人垣をかき分けて逃げていく。


 カイザルの癖にわたくしを無視して逃げる等生意気にも程があるではないかっ!!


 いったどこで人垣をかき分けて逃げるスキルを手に入れたのか……。そんなスキルなど有るはずないと分かっていても誰にもぶつからずに逃げていくカイザルを見て本当にあるんじゃないのか? と思い始めるくらいにはするすると逃げていく。


「きゃっ!?」

「おっと、誰だ? この俺様にぶつかってきたバカは? ワインが服にかかってしまったじゃないか?」

「服に関しては後で請求していただければ、汚れてしまった洋服代を支払いますので……っ」

「ほう……誰かと思ったらフィリアーナ皇女じゃないか。…………なるほど、そこまでして俺と話す切っ掛けを作りたかったのか。それならばそうと言ってくださればこちらから声をかけたというのに。しかしフィリアーナ皇女は帝国一美しいという噂は本当ですな。遠くから見ても美しいのだが、こうして近くで見るとその美しさがさらに際立つ。……どうでしょうか? いまからここを離れて個室へと休憩しに行きませぬか?」


 カイザルを追いかけている途中わたくしはとある男性を避け切れずぶつかってしまったようで、そのせいで汚れてしまった洋服代は後日支払うと言って立ち去ろうとしたのだが、わたくしがフィリアーナ皇女であると知った相手の男性はわたくしの手首を掴むと、わたくしがその男性に話したかったからぶつかったのだと勘違いしてそのまま休憩室へ連れ込もうとするではないか。


「お嬢様は今現在取り込み中ですのでその汚らわしい腕を離しなさい。豚が。あなたのような男性に好意を抱く女性がいる訳がないでしょう。鏡を見直してきなさい。」

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