第129話 話が違うでしょうっ!!



 まさにクズという言葉はアイツの為にあると言っても過言ではないだろう。


 しかし、お父様は一度決めた事はよほどの事が無いかぎり曲げる事はないだろう。


 そしてそれは、わたくしの感情一つでどうこうできるものではない事をわたくしは良く知っている。


 一人の父親としては、凄く愛情をもってわたくしをここまで育てて来てくれた事はちゃんと伝わっているし、誰が見ても非の打ち所がない自慢のお父様であるが、それとは別にお父様は皇帝陛下でもあるのだ。


 そして、皇帝陛下である以上家族よりも国の事を考えて動かなければならない事も理解しているし、だからこそ私はいつか他国に政略結婚として嫁ぎに行くものであると、この国を離れる事を覚悟して今日まで生きてきた。


 しかし、しかしである。


 あのクズ野郎であるカイザルと婚約させられるのは話が違うでしょうっ!!


「お嬢様、そんなにジタバタと暴れてしまってははしたないですよ」

「別に良いわよ、誰に見られている訳でもないのですから」

「私は見ておりますが?」

「……リリアンヌは良いのよ。 それに、どうせこの後カイザルとかいうクズの功績を称える形ばかりの式典をするのでしょう? 少しくらいはジタバタして発散しておかないと本番で発狂しそうだわ……。それでも良いのでしたらお止めに成ればいいわっ」


 そして胸の内から湧き出て来る苛立ちを発散っさせるためにジタバタと手足をばたつかせているとリリアンヌにはしたないとしかられてしまう。


 しかしながらこればかりはこうでもしないと発狂してしまいそうなので目を瞑ってほしいかぎりだ。


「まったく、ですがそのかわり本番では皇女として粗相の無いようお願いしますよ?」

「それでこそわたくしの護衛騎士だわっ!! 大好きっ! リリアンヌっ!!」


 そしてわたくしはこの後ギリギリまでカイザルの悪口をリリアンヌに話しまくると、いつの間にか時間が来たようで側仕え達がノックをした後わたくしの部屋へと入ってくると、式典用のドレスを着せ化粧を施していく。


 きっとカイザルの事だ。式典はアイツのプライドの高さと知能の低さから周囲の貴族たちを苛立出せるような発言をして、いかに自分が無能であるかを知らしめるものとなるだろう。


 そう当初は思っていたのだが、カイザルは意外にも完璧な立ち振る舞いを見せ、無難に式典を終わらせると、少し休憩を取ったあとそのまま何事も問題なくパーティーへと移行していた。


 おかしい。


 わたくしの知っているカイザルは、こういう場で自身の立場を理解できずにバカな言動をする筈である。



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|ू・ω・` )チラ

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