第127話 あの人だけは嫌です


 

 そんな女性と婚約してしまったら最後、皇族が開催するパーティーは勿論貴族が開催するパーティーにも呼ばれるだろうし、なんなら他国の貴族が開催するパーティーへ紹介されたりも当然あるだろうし『面倒くさいから行きたくない』という理由で断る事など当然できないだろう。


 そのような未来は俺の求めた未来像とはあまりにもかけ離れすぎているではないか。


 ありえないだろう、そのような婚約者。


 しかもオリヴィアとは違って婚約破棄などそう簡単にできる訳がないし、その時は俺の首が飛ぶときだろう……リアルの意味で。


「うん? カイザル君」

「な、何でしょうか? 皇帝陛下……っ」


 そんな事を思っていると、皇帝陛下がにこやかな笑顔を顔に貼り付け・・・・ながらわざわざ『君』付けで話しかけてくるではないか。


 その明らかに作られた笑顔を張り付けている皇帝陛下、普通に怖いんすけど……?


「君は、我が娘の事は嫌なのかね?」

「い、いえっ!! 何の問題もございませんっ!! 過去に一度お会いした時はそのあまりの美しさに声をかけずにはいられなかった程でございますっ!! そ、その結果私はビンタをされてしまいましたが……、それも自分をしっかり持っており表に出せるというのは夫が誤った道に逸れそうなときにしっかりと手綱を握って正しい道へと戻してくれるという点で言うと、いい妻になるのではなかろうかと思っておりますっ!!」

「…………その言葉に嘘はないようだな……っ! 流石、盟友であるダグラスの息子であるのうっ!!」


 取りあえず俺は過去の記憶から皇帝陛下の娘の記憶を掘り出して何とか褒めて持ち上げこの場を乗り切ろうとするのだが、なんだか雲行きが怪しくなってきている気がするのは気のせいだろうか?


 この場の危機はなんとか乗り越えたようではあるようなのだが、その代償そしてとんでもないモノを支払ってしまった気がするんですけど……その代償は未来の俺がきっと何とかしてくれるだろう。



◆第一皇女フィリアーナside



「何でですかお父様っ!! わたくしがあのカイザルとかいう男の事が嫌いだという事は知っているでしょうっ!!」


 今私はお父様に呼ばれて来たは良いものの、そこで話された内容を聞いて絶句してしまう。


「まぁそう言うでない、フィリアーナ。お前には悪いことをしてしまったとは思うのじゃが、今回帝国側の落ち度である以上クヴィスト家にはお詫びをしなければならなのだよ」

「それが娘を売るっていう答えなのですのっ!?」

「しかし、お主も皇帝の娘として産まれたからには政略結婚は覚悟していたはずであろう?」

「にしてもカイザル無いですっ!! あの人だけは嫌ですっ!!」

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