第126話 地雷が確定しているような女と婚約なんかするものか



「ふむ、それは今までにない考えだな。もう少し話してみよ」

「そうですね、別段多くを語る事もないのですが、もし私がこの城を作るとすれば足し算だけではなく引き算も取り入れますかね。自分の力を誇示して周囲に知らしめるのもいいですけどやり過ぎると逆に張りぼてのようにも見えてしまいかねないですし、シンプルだからこその美しさ、散っていくからこその儚さという物もありますので」

「なるほどな……流石我が息子であるっ!! 確かに、言われてみればそう思えて来たぞっ!! のう、エドワード陛下っ!!」

「……はいっ!? こ、皇帝陛下っ!?」


 誇らしげに俺の説明を聞くその姿はまさに親バカといった風あったのだが、俺はついさっき貴族と相対するときはより一層気を付けようと誓った事を早くも忘れてしまっていたようである。


 そしてその考えに至ったのがお父様であり、そのお父様は公爵家であるという事も。


 というか、まさかあの息子バカのお父様がこの俺を売るだなんて思わないだろう、普通っ!!


「話は聞かせてもらったよカイザル。この帝城はカイザルの目には下品に見えているようだね」

「い、いえっ! めめめ滅相もござませんっ!!」


 そして先ほど俺が語っていた内容を皇帝陛下であるエドワード・フォン・グラデウス陛下はしっかりと聞いていたみたいで、チクチクと嫌味を言ってくるではないか。


 せっかくスローライフを目指して過ごしていたというのに、俺のスローライフ計画は夢半ばで潰えてしまうのだろうかと、俺は内心冷汗をかきまくる。


「そう怯えるでない。そんな事でいちいち処罰していたら家臣がいくらいても足りなくなってしまうわ。…………まぁ、気に入らない家臣に関しては、また話が別だがの」


 そんな俺に皇帝陛下はまるで好々爺といったやわらかい雰囲気を醸しだしながら『そんなに怯える必要は無い』と言ってくれるのだが、後半の一言のせいでまったく安心できないんだがっ!?


「それにしても噂から聞いた感じと実際に会って感じたカイザルの印象は全く異なるな。噂では知能も品もなく欲望に忠実で権力と暴力でやりたい放題というものなのだが、実際に会ってみると高い知性と教養、そして底知れぬ大きな器が見て取れるようじゃの。これならば我が娘を婚約者として送っても心配なさそうだのう」

「へ? え? そ、そんなっ!! 私ごときには勿体なさ過ぎるお言葉ですっ!!」


 冗談じゃないっ!! 誰が皇帝陛下の娘という肩書だけで地雷が確定しているような女と婚約なんかするものかっ!!

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