第125話 自前の軍隊を持つ事ができる



 そして今回俺が帝城にまで呼ばれた理由を教えてくれる。


 そもそも自身の領地を護る為に小規模な自警団、領主とその家を護る程度の護衛集団と、領民自らが自主的に作った自警団は少なからず存在はするものの、今回のように『帝国側である衛兵を退けて、代わりに自分たちが用意した人材で領土全域を護る自警団を設立する』というのが初めてであり、そうさせないように帝国側も色々と動いて来たのである。


 その一つが、帝国が運営する衛兵であったのだが、それが今回問題を、それも公爵家が経営する領地で起こしたのだから帝国側はブチ切れたお父様の要望である『衛兵はいらないから自分たちが運営する自警団を作らせろ』という要望を突っぱねるだけの言い訳が思いつかなかったのだろう。


 当然それだけの事をしでかした衛兵内の人間は、今回の件に携わっていた者すべてを処刑という話で帝国側は何とかお父様の怒りを治めようとしていたのだが、お父様は『そんな事は当たり前だっ!!』と一蹴したのだと馬車の中で笑いながら話していた。


 そんなお父様をみてつくづく『貴族に弱みを見せたら骨の髄までしゃぶられかねない』と、より一層貴族という生き物には注意して相手をしなければと思う。


「それにしても良くやったぞっ!! まさかこの我が生きている内に自前の軍隊を持つ事ができるのだからねっ!! これで今まで使えなかった衛兵共を領地から撤退させる事ができるというものだっ!! いままで国境付近のいざこざに関しては喧嘩両成敗などと抜かしていたが、これからは向こうから仕掛けて来た問題にかんしてはしっかりとした対応をさせてもらおうかねっ!! それに、今回の事で隠居していた先代も一旦領地に戻ってくるらしいっ!! まぁ、軍を持つことは先代にとっても夢であったからなぁっ!! それはそれは大層喜んでくれているようだぞっ!!」


 そんなお父様は終始こんな感じで非常に楽しそうである。


 というか自警団ではなく『軍』って言いきっちゃってるし……。


 それでもお父様や先代が喜んでくれているのならば、わざわざ突っ込んで水を差す理由もないだろう。


 そして馬車はお父様の楽しそうな会話をBGMにしながら帝城へと向かう。





「いつ来てもここは無駄に豪華ですね……上も下も左も右も、何処を見ても金をかけているのが一目見て分かります」

「カイザルは、豪華な造りは嫌いか?」

「いえ、嫌いではないのですが、こう侘び寂といいますか、足すばかりでは芸も品も無い、言ってしまえば下品な造りに見えてしまうのです」

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