第124話 諦めた訳ではない



「そ、そのような証拠は無いですが……ですが心を入れ替えてこれからこの領地の為に身を粉にして働きますのでどうか、どうかお慈悲をっ!!」

「なぁガルド、一度裏切った人間の言葉を信用できると思うかい?」

「…………っ」


 そう告げるクヴィスト様の目は今まで見てきたどの時よりも冷たい目をしており、その目をみた俺はクヴィスト様を説得する事はできないと悟る。


 しかし、まだ生きながらえる事を諦めた訳ではない。


 ここでクヴィスト様を殺してこの場から逃げ切る事ができれば、俺はまだ生きながらえる事ができるだろう。


「クヴィスト様には申し訳ないのですが、ここで死んでもらいましょう」


 そう言うと俺は腰に差している剣を鞘から抜くと、クヴィスト様へ切り付けようとする。


「させる訳がないでしょうぉ?」


 しかし、その剣がクヴィスト様に届く前に俺の両腕は切り落とされてしまう。


「…………お、お前……っ!!」

「へぇ、両腕を切り落とされて叫ばないなんて意外ですわぁ。あと、殺さないようにとカイザル様から言われているので、一応止血目的で回復魔術を施してやりますぅ」

「さすがカイザルの育てた奴隷だなっ!! 忠誠心はさることながらこの強さっ!! 我の後を継いでもクヴィスト家は安泰である事は約束されたも同然であろうっ!! 今までカイザルの事を悪く言っていた貴族連中達の名前と、どんな誹謗中傷を口にしたのかというのを集めた名簿を作って置いて良かったわっ!! もう少しすればその名簿で相手を揺する事も可能となるだろうからなぁっ!! しかしよくやったっ!! この活躍はカイザルにしっかりと伝えておこうっ!!」

「ありがとうございますわぁ」


 そして俺はそんな事を二人で会話をしているのを聞いている途中で急激な睡魔に襲われ、意識を失うのであった。



◆主人公side



 何故か前回の衛兵の汚職を見抜いて法を下に捌いたことを表彰されるという事で、俺は皇帝陛下に呼ばれて帝城へといく事となった。


 正直何故こんな事で? とは思うのだが、皇帝からそう言われてしまっては違うとも言えなければ帝城へといく事を断る事もできない。


「今回は流石の我も皇帝陛下へかなりきつく苦言をしてやったぞ、カイザル。お陰で我が領土にいる衛兵は全て撤退させて新たに我がクヴィスト家で自警団を作る事の許可を得た。今回呼ばれたのはその許可を口頭で伝える事によって他の貴族にも知らせる事が目的であろう。我が領地が衛兵を追い出して自警団を作る事を怪しみ謀反を起こそうとしていると言い出す者もいるだろうからな」

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