第123話 証拠を出したまえ
「な、何故その事を……っ!? ま、まさかっ!!」
何でその事をクヴィスト様が知っているのか、と疑問に思ったのだが……一つだけそれが可能である事に気付く。
「そう、そのまさかだよ、ガルド。今君が『クヴィスト家の嫡男、カイザルの名を騙る者』というのが我の息子本人なのだよ。そして、あそこにいる女性はカイザルの奴隷だ。親目線ではあるもののなかなかに化け物じみた強さだとは思わないかい? 流石我が息子であるなぁっ!! のうガルドよっ!! 君もそう思うだろうっ!!」
「…………は、はい……っ。そ、そうですね……っ!」
「どうしたんだい? ガルド。 今日はなんだか元気がないみたいじゃぁないかい?」
そしてクヴィスト様は俺の肩をポンポンと叩きながら自分の息子であるカイザル様の自慢をはじめるではないか。
その明るい表情からワンちゃん俺はクヴィスト様に許されたのではないのか? という希望が見えて来る。
「まぁ、こんな事が起きて領主にもバレていると知っていまったら気が気じゃぁないか。でも安心して欲しい。我が息子であるカイザルの所有している奴隷は今百人を超えているそうだっ!!」
「そ、それは凄いですね……っ」
「あぁ、凄いだろうっ!! これだけ居ればお前達が居なくなっても、次に新しい治安維持組織を作るまでの繋ぎにはなるなっ!!」
「……なっ!?」
しかし、クヴィスト様から出た言葉は、我々衛兵の組織を解体またはこの領地から撤退させるというような内容ではないか。
そうなれば、俺は例えこの領地からの撤退であったとしても今回の問題が不問になる訳もなく、今の衛兵長というポジションは間違いなく剥奪されるだろう。
それだけならばまだ良いのだが、裁判にかけられて罪人として監獄暮らしになる可能性だってあるではないか。
「ま、待ってくださいクヴィスト様っ!! このままでは俺は衛兵長というポジションを剥奪さてしまいますっ!! それどころか罪人として監獄に入れられてしまう可能性だってゼロではございませんっ!!」
「うーーん、君はもしかしてまだ生きていられるとでも思っているのかい? それは流石に楽観的すぎるだろう?」
「……へ?」
「領主に隠れて場所代、言い換えれば土地代を徴収するなど、許すはずがないではないか。徴収した金を平民の為に使っていたとかならばまだ『我が徴収した税金』として上に報告する事も出来たのかも知れぬが……どうせゴッヨクもお前達も私利私欲として使っているのだろう? もし反論があるのならば今ここに『市民の為に使用した』という証拠を出したまえ」
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