第122話 どこへ行こうというのかね?
ありえない。
ドルンが放つ全力の突きがああも簡単にカウンターを入れられるなど普通に考えてありえない。
ドルンの放つ突きのスピードは人間が反応できる速度を超えているため、ドルン自らも突きを放ってしまたら放つ前に対象にした物を通過するまではコントロールできない技である。
それを、突きを放ってから目で見て対処するなどありえる筈がない。
あるとするならば予め予測をして先に攻撃技を出しておかなければならないのだが、そうするとドルンが相手の動きに気付いて突きを放つ事を止めるはずである。
その為、信じられないのだが、あの女は実際にドルンの突きに反応して対処している事になるのだ。
「あ、ありえないっ!! どうやってドルンの攻撃に反応できたんだっ!?」
「私からすればぁ、あの程度の攻撃に反応できない事の方がありえないんですけどぉ?」
駄目だ、ドルンの突きに反応できるような相手にこの俺が勝てる訳がないし、どう勝てば良いのか想像すらできない。
ここは逃げる事が最優先だろう。
「……どこへ行こうというのかね?」
そう判断して俺はこの場から即逃げようとしたその時、ここの領地を経営している者であるダグラス・ヴィ・クヴィストが逃げようとした進行方向の先に停まった馬車から降りてくるではないか。
「あ、いや……ちょっと問題が起きておりまして、そうっ! 今まさに問題が起きているのですクヴィスト様っ!! あの女が衛兵の庁舎へ攻撃してきているのですっ!! しかも今クヴィスト家の嫡男であられるカイザル様の名を騙る者が市民を傷つけているという報告を受けており、今そちらへ向かおうとしているのですが、御覧の通りあの女に邪魔をされている所でございますっ!!」
一瞬だけ肝が冷えたものの、よくよく考えればこの状況は俺にとってチャンスではないのか? という事に気付く。
そうとなれば早速実行に移すのみである。
今までこの街の為に汗水たらして働いて来たこの俺と、どこの馬の骨かも知らない怪しい女であれば、どちらの話を信じるかは考えるまでもないだろう。
「ふむ、俺はカイザルの奴隷から本来お前たちの仕事である巡回と治安維持をゴッヨクという者へ斡旋しており、市民達に対して場所代を徴収していた所にであった為、今すぐに衛兵の庁舎へ行って証拠を隠滅される前に取り押さえて欲しいという連絡を受けてここへ向かったのだが、その我が息子の話は嘘だとでも言うのかね? まさか、貴族の真似事をして市民から金銭を奪うなど……やってくれたな? ガルド」
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