第121話 速くなった利点が台無し



「な、なんだこれはっ!? その見た事も無い剣もそうだが、その剣を持つ背中から生えている巨大な腕は何だよっ!?」

「何って、私も詳しい事は分かりませんけれどもぉ、先程言った通りこの子は最大モデルの日本刀で名前は【白菊】ですのぉ。ご主人様にママゾンストア? というところで買って頂いた、宝物ですわぁ」


 俺は勿論ドルンも同様に目の前に出された巨大な腕と剣が何なのか分からないようで、ドルンがノナにこの武器が一体何なのか聞いてみるのだが、ノナから返ってきた答えで分かった事は、武器は日本刀で名前が白菊、ママゾンストアというところで購入したという事くらいであった。


 はっきり言って日本刀という剣も、ママゾンストアというのも今まで聞いたことが無く、それを説明されたところで全く理解できない自分がいる。


 ノナが持っている剣については、要は巨大な剣であり、あの巨大な腕で人間では扱う事の出来ないその剣を扱うことができるという事なのだろうし、おそらくドワーフに作らせた一級品であろうことも窺う事ができる。


 しかしながらママゾンストアに関しては全く以て少も理解できない……。


「さっきから訳が分からない事を言いやがって……。見た事も無い武器とその大きさに初めは圧倒されてしまったが、そもそもそんな大きいだけの玩具を使ってこの俺に勝てる訳がないっ!! 舐めるのもいい加減にしろっ!!」


 そしてドルンはそう言ながら槍を握り直して再度構えると【身体強化】を自身に掛け【炎属性付与】を槍へ付与する。


「先ほどはたまたま防げたかもしれないが、今度はそう簡単に防げないぞ? 女」

「わざわざ待っていてあげたのにその態度はぁ、流石にダサいと思うわよぉ?」

「フンッ! それが命取りになっているとも知らずにデカい態度を取っているお前よりかはマシだよっ!!」


 俺はドルンが【身体強化】と【炎属性付与】を行使した時点で勝ちを確信した。


 ドルンがこの二つを行使して負けた事は今まで一度もないからである。


「いまさら謝罪してももう遅い。過去の自分を呪うんだなっ!!」

「あらあら、そっくりそのままお返しいたしますわぁ」

「あぎゃっ!?」


 そしてドルンは強化した肉体で疾風の如く女へ駆け、槍に付与した炎属性はまるで彗星の尾のように伸びる。


 しかし次の瞬間、ドルンは女の剣の腹で弾かれて庁舎の中へと吹き飛ばされてしまうではないか。


「何が来るかと少しだけワクワクしたのだけれどぉ、ただ速くなっただけで、しかもその速さを生かす為に前後左右に動いて攪乱させる訳でもなくぅ、バカみたいに一直線に突撃してくるとか、折角速くなった利点が台無しじゃなぁい」

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