第117話 間違っていなかったという証拠
◆衛兵庁舎:衛兵長ガルドside
「住民からのタレコミが来ておりまして、どうやら西にある露店エリアで問題が起きているようですがどうしましょうか?」
副衛兵長であるドルンに言われて耳を澄ませてみれば、窓の外から女性の金切り声がここまで届いて来ている。
「お前も分かっているくせに」
「一応仕事ですので。ではいつも通り無視してシューセンド商会に任せるように下へ連絡しましょう」
「あぁ、そうしてくれ。しかしゴッヨク・シューセンドがあの区画を仕切ってくれるお陰で我々はかなり助かっているな。そうだ、今度お土産でも持って行って労ってやろうか。あいつも何だかんだで毎日毎日馬鹿共の対応で疲れているらしいしな」
今から一年ほど前に西にある露店エリアの治安維持を任せて欲しいと言って来た時は『たかだか商人に何ができるのか』と思っていたのだが、蓋を開けてみればゴッヨクは何だかんだで頑張ってくれているようではないか。
頼もしい限りだ。
あの露店エリアに関してはハッキリ言って『できればやりたくない面倒くさい区画』の一つであった。
というのもスリといった犯罪も多ければ露店主同士、客同士、酔っ払い同士、等々、愚民共の世話で付きっきりになってしまうからな。
スリなどの犯罪行為で呼ばれたのであればまだ許せるが愚民同士のトラブルは自分達で解決してほしいと常に思っていたところにゴッヨクの話が来たのは正直な話し有難いと思ってしまう自分が居た。
そして結果は露店エリアでの仕事はほぼ無くなるだけではなく、頭の固い馬鹿どもを炙り出して衛兵を辞めさせることもできるだけではなく、ゴッヨクから露店エリアで衛兵の真似事をする許可代として決して少なくない金銭を払って貰ており、それを丸々自分のポケットにいれる事ができるという現状を見れば、あの時ゴッヨクに任せるという判断をした俺は間違っていなかったという証拠であろう。
にも関わらずその事に対して『不正』だの『汚職』だの『職権乱用』だの『衛兵としての誇り』だのなんだのとこの庁舎の長であるこの俺に対して『お前の判断は間違っている』といってきた奴らに『どこが間違っていたんだ?』と一人一人聞きに行きたいくらいである。
「た、たたたたた大変ですっ!!」
「どうした、そんなに慌ててからに」
そんな事を思っていると、巡回していた部下が血相を変えてノックもせずに部屋の中に飛び込んで来たではないか。
「そ、それが自称クヴィスト家嫡男であるカイザルであるという青年がゴッヨクに暴力を振るっておりまして……っ!!」
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