第114話 新生活応援セール



「だ、黙って聞いていればこの俺様に偉そうな事を言いやがって……しかもクヴィスト家の名前を騙るとは……バカはお前だよ。クヴィスト家の奴らがこんな平民がわらわらいるような場所に来るわけがないだろうっ!! おいっ!! そこの衛兵っ!! 黙って突っ立っていないで上に『クヴィスト家の名を騙る無礼者がいる』と伝えてこいっ!! 早急にだっ!!」

「は、はいっ!!」


 ここまで言ってもこの豚は俺の事を『クヴィスト家の名前を騙る偽物』であると、顔を真っ赤にしながら怒鳴り散らし、更には近くにいた衛兵に対して俺の事を『クヴィスト家の名前を騙る無礼者』がいるから上に伝えてこいと命令するではないか。


 クヴィスト家である俺の目の前で、クヴィスト家が経営している領地で、その領地を守るはずの衛兵に対して、何でこいつは偉そうに命令口調で指示を出すではないか。


「おい、そこの衛兵。何でクヴィスト家でもない人間の指示を聞くんだ? お前は誰が経営している領地の衛兵だ? この豚か? 違うよなぁ? まさか、クヴィスト家嫡男であるこの俺様の目の前で、そんな事はしねぇよなぁ?」

「へ? あ、その……っ」

「こんな奴に騙されるなっ!!嘘に決まっているだろうが、このバカがようっ!! 簡単に言いくるめられてんじゃねぇよっ!! さっさと俺の指示通りに伝えてこいやっ!!」

「ひゃ、ひゃいっ!!」


 ここで何も言わずに衛兵を行かせても良かったのだが、一応チャンスを一度だけ与えてやると、ブタがブヒブヒと吠えてしまい、衛兵は逃げるようにこの場から走り去ってしまう。


 本当に衛兵にしろこの豚にしろ、どうしてくれようか……。


 この後司法で裁くのは当然として、こいつの下っ端のように気絶させて牢屋にぶち込んでから裁くのはあまりにも芸が無いというか、俺の気が済まない。


 どうしてやろうかと、目の前で唾を飛ばしながら叫ぶように切れ散らかしている豚の言葉は右から左へ受け流しながら悩んでいると、俺はある事に気付く。


「おいっ!! 聞いているのかお前っ!!」

「あ、そう言えば今ママゾンストアは『新生活応援セール』が開催中じゃねぇか。期間限定ポイントアップ中だし、面白そうな魔術を購入して奴隷に覚えさせて、死なない程度にコイツで試してみるのも良いかもな。後は適当に日用品でも買っておくか。あとは新しい人工知能搭載ロボを購入するのも良いし……、その性能をこの豚で試してみるの良いかも……」

「マイマスター、高級オイルも買い溜めお願いします」

「……普通のオイルじゃダメ? 高いんだよな、これ」

「駄目です。オイルに妥協は許しません」

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