第113話 その勇気だけは評価してやるよ



 流石の俺もこれ以上は傍観している場合ではないと判断して、一旦手下とブタを殴る事にする。


 そもそもどう見ても、クヴィスト家の領地内でありクヴィスト家の許可を取っていると言っているゼフ側が言い掛かりをつけられている被害者である事は誰が見ても明らかだろう。


 にも関わらずこの豚が命令したからと言って簡単に殺そうとしている手下どもは俺からすれば同罪である為、殺されても仕方がないと思っている。


 かといって、俺はこいつらの所まで堕ちるつもりは無いので司法で裁く為にも殺さないように加減して鳩尾を殴り気絶させてマリエルに逃げられないよう拘束するように指示を出したあとに豚を殴り飛ばす。


 まぁその裁判を開くのはクヴィスト家の領地であり、その領主がどう判断するかなど目に見えて明らかなので、ここで死ぬか裁かれて死ぬかの違いでしかないのだが、人間というのは前者であれば『野蛮』と判断し、後者であれば『聡明』と、たった一枚司法で裁くというフィルターをかけるだけで正反対の判断するのならばそうした方がコスパ的にも良いだろう。


 既に俺の事を悪く思っている者までいちいち偽善行為までして評価を覆そう等とは、面倒くさいので思ってはいないのだが、まだ俺の事を判断しかねている者までわざわざ嫌われるように行動する事も無いだろうし、長期的な視点で見るとこちらの方が明らかにコスパが悪いのでただのバカがする事である。


 そして俺は殴り飛ばした豚の所まで歩いて行くと、運良く豚の意識はまだあるようなので、もう少し虐めてやることにする。


 地面に倒れて悶絶している豚の髪の毛を掴み無理矢理立たせると、俺は顔を近づけて再度『誰に許可取ってこんな事をしているのか』と問う。


「お前こそ誰だよっ!! この俺様にこんな事をしてただで済むと思うなよっ!!」

「当たり前だろう。ただで済ます訳がねぇよなぁ? ここクヴィスト家の領地で、クヴィスト家の許可を得ずに勝手に場所代として金銭をくすねているんだからなぁ。そこで野次馬として眺めている衛兵達も同様に許すわけが無いから覚えておけよ? 逃げても良いが、この俺様から逃げられると思わない事だな。そもそもお前、何でクヴィスト家が販売を許可しているこの者達に対して数々の暴言や暴行、そして金銭を強奪しようとした行為をよくできたなぁ? その勇気だけは評価してやるよ。そのお陰でこんなバカの血を後世に残すという、この領地ひいては帝国にとってデメリットでしかない未来が途絶えて無くなるのだからなぁ」

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