第112話 この豚をどうしてくれよう?
◆主人公side
「それで、、誰に許可を得て場所代を取ってんだ?」
今日は確かゼフとサラが領地内で栄えている街まで出向き、村で収穫した魔獣の果実を売る日だと事前に伝えられていた為、たまには顔を出してやるかと思い、ゼフ達がいる街まで出向いてみたのだが、目に入ってきた光景はサラと、でっぷりと太った明らかに小金持ちであろう男性と揉めている光景であった。
そしてこの二人の話を聞くと、どうやらデブがこの辺りを仕切っており衛兵の真似事をしているため、その治安を維持している場所をそのデブに話を通さずに露店を構えていたゼフ親子に切れている、といったようである。
しかしながらおかしな話である。
たしかここの衛兵は半分帝国が金を出しているとはいえ、もう半分はクヴィスト家が出して払い、雇っているはずであり、本来であればこのデブではなく衛兵が治安維持のために周辺を見張りつつ巡回しているはず。
であるのならばこのデブがそんなたわごとを言ったところで誰も信じないだろうし、サラのように怒っているはずだ。
それでもこのデブの態度が改まらない場合は衛兵を呼ばれて罰せられ、そしてこいつの行った悪事についてはクヴィスト家にまで届くはずである。
にも関わらず、お父様からはそのような話を一度たりとも聞いた事もなければ、そもそもこんなに揉めているにも関わらず衛兵が駆けつけてこの豚を追い払うなり捕縛して連れているなりといった事が起きないのである。
明らかにおかしいと思いあたりを見渡してみると、遠くのほうで衛兵が呑気に欠伸をすながらこちらを一度だけ視線を向けた方と思うと、そのまま無視して通り過ぎていくのが目に入ってくる。
これは明らかにこの豚が袖の下を、衛兵を取り仕切る我が領土の庁舎のトップへ渡しているのは間違いないだろう。
ずぶずぶの関係であるからこそ、この豚の起こした問題に関しては見て見ぬフリである上に、代わりに仕事もやらせて楽をしようというのが窺えてくる。
そしてこのデブはここ一帯の巡回をうけもつ事で場所代を露店に請求できているのだろう。
こんな状態では領民がいくらこの豚に不満を持ち、衛兵にどうにかしいて欲しいとお願いしたり、クヴィスト家にこの事を伝えて欲しいと言ったところで、その言葉は握りつぶされていたのだと思うと、俺は心の奥底でふつふつとした怒りの感情が沸き起こってくる。
この豚をどうしてくれよう?
そんな事を思っているとあの豚は言うに事欠いて手下にゼフを殺せと命令しているではないか。
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