◆4:スローライフへの第4歩

第106話 力の限りひっ叩いてやる



◆豪商ゴッヨク・シューセンドside



 ここ最近見た事もない果実を売りに来る者がいた。


 その果実は瑞々しく、今まで食べたどの果実よりも甘く、そして軽いケガ程度であれば食べただけで治ってしまうほどの果物であった。


 普通であればそんな果物は皇族、または形が悪いハネものであれば貴族くらいにしか出回る事など無く、平民が買うような場所で露店として売って良いような代物ではない事は確かである。


「おいお前、誰の許可を取ってそこで露店を開いて売っているんだ?」

「誰ですか? あなたは。私はちゃんと領主様に許可をとって販売しているの。文句があるなら私じゃなくてギルドに言いなさいよっ。商売の邪魔だからどっか行きなさいっ!!」

「おい、腹が立つのも分かるが言い方ってものがあるだろう? あんたもウチの者がすまないね。だけどコイツが言った通り俺たちはここの領主であるクヴィスト家の許可をちゃんと貰ってから露店を開いているんだ。文句は領主に言ってもらえませんかね?」


 そして俺はその珍しい果実を売っている露店があると噂がある場所へと行き実際に存在するかどうか確かめてみると、確かにそこには見た事もない果実を売っている露店を発見したではないか。


 その露店にできている人だかりから見てもあの店で間違いないだろう。


 そう思った俺は早速その露店まで行き、売り子をしている女に対して『誰の許可を取って露店を出しているのか』と確認を取ると、その女は舐めた態度で豪商であるこの俺に向かって口を効き『領主であるクヴィスト家から許可を貰った』などと言うではないか。


「ほう、領主から許可を貰ってそこで露店を開いていると、そう申すのか?」

「だからさっきからそう言っているでしょうっ!! あんた耳が付いているのかしら? それとも脳みそが無いのかしらっ?」

 俺はもう一度、舐めた態度の女に『本当にクヴィスト家から了承を得たのか?』と確認すると、女は態度を変える事もなく相変わらず舐めた態度で『そうだ』と言い張るではないか。


 なので俺はその娘の左頬を力の限りひっ叩いてやる。


「い、いきなり何するのよっ!?」

「あ? たかだか平民の分罪で豪商であるこの俺に舐めた態度を取るから躾も含めて叩いただけだろう?」

「豪商といっても商人なら私と同じ平民じゃないっ!! こんなことしてただで済むと思わない事ねっ!! 衛兵に突き出してやるんだからっ!!」


 しかしながらこの女は一発叩いただけでは自分の立場を理解できていないようなので、今度は右頬を思いっきりひっ叩いてやる。

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