第95話 それに見合ったメリット



 なにが『なるほど』なのかと聞き直したくなるくらいにはサラの顔は『全く分からないけれど取り敢えず相槌を打っておこう』というような表情をしているではないか。


 しかしここで突っ込んで追求したところで話は進まないので無視して先に進む事にする。


「取り敢えず最初の段階としてニーフには植物系魔獣たちに『木を切るけど、全てを切るつもりは無い事。木を切る事によって陽の光が地面まで届くようになり光合成がしやすくなり、植物も陽が当たる事よって育ちやすくなる事。密集していた事によるストレスも緩和する為残された木も育ちやすくなる事』などなど我々人間の手が加わる事によるメリットを伝え、さらにニーフが居なくとも人と意思疎通ができるように簡易ではあるものの、マグネット式のメッセージボードを作る事により、より円滑かつピンポイントで人の手を加えられるようにしたりという事を伝え、ノムには豊かな土壌作りと加護をこの地に提供する事によって魔獣たちの警戒心を解きやすくすると共にこちらの願いを断りにくくする、というか断ったら豊かにした土壌と加護を元に戻すと持ち掛けるつもりだ」


 魔獣と言えども知能が無いわけではなく、何十年と生きた物の中には高知能、人の子供レベルの知能を持つ個体も少なくないというのは元の知識で知っているので、意思疎通さえできれば交渉は可能であるのであれば、共存の為にできる事はするべきだろう。


 ……共存というのは聞こえが良いが、見方を変えればノムの能力を脳裏に焼き付けてニーフが『共存』という建前を用意する事で折れやすくするだけなのだがどっかの三枚舌外交した国よりかはかなりマシ、というかお互いにメリットがある時点でこの方法に文句を言われる謂れはない。


 何も豊かな土へ魔獣たちには内緒で変えて、広範囲でこの土壌が無ければ満足しない魔獣が増え、知能の高い個体がこの土壌の危険性を感知して我々に止めるように意思表示してきたら武力でねじ伏せ平和条約を叩きつけるような事をするとは言っていないのだから。


「なるほど、いろいろと考えているのね」

「そりゃそうだろう。違う種族との共存なのだからこれでもまだ足りないくらいだろうし、これから細かい所で色々と問題は起きては解決するという事が繰り返されるとは思うがそうやってその都度問題を解決しては前に進んで行ければ良いだろう。それに、当然『共存』という事は当然人間側にもそれに見合ったメリットがある訳だし、人間側にとっても悪い話ではないと思うぞ?」

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