第78話 それが何よりも腹が立つ



 しかし、その私の考えが甘い事が次の瞬間分からされてしまう。


 相手の斬撃を受け止めようとした私の剣は、まるでバターを切るかの如く簡単に切られ、そのまま私を切れば良いにも関わらず、斬撃を止めてくるりと剣を持ち換えて柄の部分で鳩尾を突かれてしまうではないか。


 あまりの痛みに息は出来ないし涙で視界は歪むし、今すぐにでも地面を転がりたい衝動に駆られるのだが、その欲求を【帝国内でも屈指の実力】だというプライドがそれを許さず、必死に耐えて私は相手の追撃に備えバックステップで距離を取ろうとする。


 しかしながら相手はそれすらも予期していたのだろう。


 私がそうするのが予め分かっていたかのように私のバックステップに合わせて前へと距離を詰めると、そのまま足払いをされて空中に留まっている瞬間に掌底で胸を打たれて地面に叩きつけられる。


「が……っ! あ……っ!! あうっ!!」


 胸を強打されたせいでまともに息も吸う事ができず、先ほどまであったプライドなど等に砕け散っており、欲求のままにもがき苦しんでいる私へと、ヘプタが歩いて近づいて来る。


「あらあら、先ほどまでの威勢はどこへやら。あんなに自信に満ちていた貴女の顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃ……それでもあなたは生きている事を感謝しながら今日私に生かされた事を感謝して生き続けなさい。それと、次に私たちの組織をバカにしたらこの程度では済まないから注意する事ね。……でもご主人様にママゾンストアで買ってもらった時に付属していた取扱説明書には【召喚主が指定した内容で過去最も優れた者(英霊)が召喚される】と説明されていたので、先程あなたが見下して相手した者は『攻撃に過去最も優れた英霊』でありあなた如きが勝てる訳がないわ。安心なさい、この帝国内、表の世界では変わらず貴女は強者よ」


 悔しい。


 悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい。


 なによりも自分は強者であると自惚れていた事に気付き、それが何よりも腹が立つ。


 そんな苛立ちが怒りの感情となり、その感情のまま私はヘプタを睨みつける。


「あら、まだ貴女の目は死んでいないみたいね。でも、これ以上は流石に殺してしまいそうだからこれでお終い」


 そうヘプタが告げた所で私の意識は途切れてしまうのであった。

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