第74話 裏組織を潰す裏組織



「だ、誰だっ!? こそこそと隠れていないで姿を現せっ!!」


 このまま相手の姿が見えないのはヤバいと思った私は、一旦相手を煽ってみる事にする。


 普通であれば私は話しかける事もなく、誰にどのように殺されたのかもわからずにここで命尽きたかも知れないのである。


 そして相手は私に感づかれる前に殺す事をせずにわざわざ私に話しかける事によって、殺しにくくしている事を考えればもともと私を殺すつもりが無いのか、もしくは私レベルであれば気付かれたところでいつでも殺せると思っているのか……。


 もし私に声をかけてきた者が、スレイヴ・トレドとブレット・モーデルを殺した者であるのならば後者である可能性が高いだろう……。


「そんなに警戒する必要は無いわ。私はただここを本拠地にしていた裏組織の残党が来たら殺すように命令されているだけですもの」


 相手はやはり私の事を舐めているのか、部屋の奥にあるスレッドが座っていたであろう趣味の悪い椅子に座った状態でいつの間にか姿を現しているではないか。


 その女性は濃い紫色をしたウェーブがかった髪を腰まで伸ばし、黒いドレスを纏い、顔の目の部分は黒いハーフマスクで隠しているのだが口元とだけでもかなりの美貌の持ち主である事が窺える。


 さらに美貌に負けない程、身体の方もスタイルが良く、出る所は出て引っ込むところは引っ込んでおり、彼女の仕草も合わさってそれがさらに妖艶さを醸し出していた。


 もし私が男性であったのならば、間違いなく見惚れてしまってしまい、まともに考える事も難しかったかもしれないと思ってしまう程の容姿である。


 息をのむ美しさというのはきっとこういう者に使われる言葉なのだろう。


 そんな美女が『ここを本拠地にしていた裏組織の残党が来たら殺すように命令された』と話したではないか。


「もしかして……ここを本拠地にしていたスレイヴ・トレド率いる裏組織は貴女達別の裏組織が潰したというのか?」

「裏組織と言われるとすこし訂正したいのだけれども、表立って活動できないという点で言えば裏組織に入るのかしら? ただ説明するならば社会の裏に蔓延るゴミみたいな裏組織を潰す裏組織と言えば分かりやすいかしらね? あと、ここの組織を潰したのは私たちで合っているけど私ではないわ。コードネーム【モノ】が暇つぶしに潰したようね。でも今の私であればこの程度の組織は一人で潰せるわね。あぁ、我が偉大なるご主人様から頂いたこの力……早くこの世界に蔓延るゴミムシたちを潰す為に使いたいわね……っ!!」

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