第71話 根は真面目で努力家
「良いだろう。ここで一番強いのは私だ。お前が望むのならば相手をしてやろう。開始の合図など面倒だから君が良いタイミングでいつでも攻撃して来ても構わないぞ」
「……ふざけやがってこのアマッ!! 女の癖に調子に乗りやがってっ!!」
この偉そうな自称道場破りだと言う流浪者を見て私は『良いところに来た』と思ってしまう。
コイツには悪いが、私の憂さ晴らしとして丁度いい相手だ。
それに、私は女性だからと見下す奴を許さない。
「この俺をコケにしたことを後悔させてやるぜっ!!」
そして相手は腰に帯刀していた片手剣を抜刀すると、そのまま私に切りかかってくるので私は木刀で迎え撃つ。
「ほう、良い剣筋と立ち回りは言動とは違ってこちらは実に素直で堅実とは……。それはちゃんと鍛錬を積んで来た証でもある。ではお前のその態度はわざとである可能性が高いのか」
「うるせぇっ! そんな訳がねぇだろうがっ!! 俺は強いと思っている馬鹿を潰してやりたいだけなんだよっ!!」
「それにしては剣筋があまりにも素直過ぎる。確かに良く居る道場の師範代レベルであれば君の方が強いとは思うが、それだけだな」
「あぐぅぅぅぅうっ!?」
彼の動きは正に教科書通り、基本に忠実であり、きっと根は真面目で努力家なのだろう。
それを隠す為に敢えてあのような言動を行って、相手の目をごまかす事により、相手が困惑している間に勝負をつけるというのが一つの狙いなのだろう。
だからこそ相手の剣筋が読みやすい為、私は相手の手の甲に攻撃を当てて、持っている剣を叩き落とす。
「これでおしまいか?」
「ま、まだまだっ!!」
そして右手を抱えながらうずくまる相手に私は挑発すると、相手はキッと私を睨みつけてくると、今度は初めから手加減せずしっかりと身体強化に加えて武器スキルや魔術を駆使して立ち回ってくるので私はその度に潰していくのであった。
◆
「姉貴っ!! 行ってらっしゃいっ!!」
あの後あのバカは何故か私の事を姉貴と慕ってくれ、騎士団候補生として正式に我が家の生徒となる事にしたらしい。
それは良いが、何処へ行くにも私の後をついてこようとするのは、好かれているのは嬉しいが流石にどうにかして欲しい。
そんな、新しく生徒となった者に見送られながら私は学園へと向かう。
するとそこで貴族の男性が、とある別の貴族男性に仕えている奴隷メイドにちょっかいをかけているのが目に入ってくる。
側から見ても女性の方が嫌がっている事が一目で分かった為これ以上はトラブルになると思った私は、助けに入ろうとした瞬間、その奴隷メイドの主であるカイザルが私よりも早く動いて女性を助けようと前に出ているではないか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます