第70話 道場破り
「お嬢様、本日もありがとうございましたっ!!」
「「「「ありがとうございましたっ!!」」」」
「まったく、いつも言っているだろう? これは私が好きでやっている事であり君たちの為にやっている事ではないから感謝の言葉は必要ないと」
あの日から五年の歳月がたった。
まだ子供であった私は、今では我が家で抱えている護衛や騎士団候補生たちを集団で相手にしても負けない程に強くなった。
ちなみに騎士団に所属できなかった者はそのまま我が家で護衛ないし領地を護る衛兵として雇っている。
初めの頃は入隊したての者でさえも勝つことが容易ではなかった事を考えれば、着実に強くなっていると実感できる。
「そんな事はありませんっ!! お嬢様がこうして私たちの相手をしてくれるからこそ我々は日々の鍛錬を頑張る事ができるのですっ!! それに、お嬢様がこなす日々の鍛錬を見ていると我々ももっと頑張らなければと思えますっ!! だからこそ我々はお嬢様に感謝の言葉を言うのですっ!!」
構成の中リーダーに選ばれている若い青年が憧れの籠った視線を私に向けてそんな事を言うのだが、私は心の中で『そんな目で私を見ないでくれ』と思ってしまう。
あくまでも私は復讐の為に己を磨いているのであり、市民の為弱きものを助ける為にと日々鍛錬している者達から憧れの視線を向けられるような人間ではない事は私が一番理解しているのだから。
「へぇ、ここがこの領地で一番強いとされる道場か。 ……道場と言って良いのか? まぁいいや。強い者を育てているという点では代わりねぇからな。どちらにせよこの俺を楽しませてくれるのならばそれで良いからなぁっ!!」
そんな、軽く自暴自棄になっている時にガラの悪そうな男性が我が家の敷地に勝手に入って来て、明らかに喧嘩を売ってくるではないか。
「……なんだお前は?」
「あ? 見て分からないのかよ。道場破りだよ、道場破り。昨日武闘派が多いと有名なこの領地にあった道場を何件か巡ってみたんだが、どこも骨のある者がいなくてムシャクシャしてんだよこっちは。何が『武闘派が多いとされる』だよ、くだらねぇ。ここでお山の大将を俺が潰して二度とそんな事を言えないようにしてやるぜ」
「だ、黙って聞いていれば失礼ではないかっ!!」
「あ? 誰だお前?」
「俺はここの候補生のリーダーを──」
「俺の言った事が聞こえなかったのか? お前みたいな雑魚じゃなくて、ここで一番強い奴を出せって言ってんだよこっちはっ」
いきなり来て無礼な態度を取り続ける男性に候補生のリーダーが前に出るのだが、件の男性は話の途中で『お前には興味が無いからここで一番強い奴を出せ』と遮るではないか。
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