第44話 私が生きていく指標
ちなみに今私が探しているのは連続殺人犯であり、ギルドの張り紙には『娼婦(街婦)を連続で殺している』という説明がなされていた。
なので私はご主人様に教えていただいた闇魔術段位二【闇隠れ】を行使して闇の中に潜みながら路地裏を探していく。
するととある一角、スラム街に近い路地裏で娼婦らしき女性が複数人ほど道の端に立っている個所を見つけ出す事ができたので、そこで張り込むことにする。
そして待つ事小一時間でそれっぽい男性が現れてくれたのは僥倖と言えよう。
正直な話数日間は張り込みする必要があると思っていたのでこんなにあっさりとターゲットが現れてくれるのは私の立場からしたらありがたい話である。
逆にいうとそれだけ犯人からすれば常習化しているという事でもあるのだろう。
いったいどれだけの娼婦が犠牲になってきたのだろうか……。
しかもこいつが関与しているであろう殺人の数と、日々消えている娼婦の数が合わないので、恐らく裏で奴隷商人に売り渡したり、または実験ないし薬剤用に臓器などを売っている可能性はかなり高いだろう。
その為、裏にはそこそこ大きな人身売買の組織が存在しているのではないか? というのがギルドの依頼内容に書かれている注意事項である。
勿論、ギルドに依頼として出されている事は相手も理解しているからこそ、一番危ないであろう『娼婦を誘い出す』という仕事をしているような奴は、所詮組織の構成員の中でも末端の者であり、そいつを捕まえたところで根本的な解決にならないだろう。
なので私はそのまま目の前で娼婦を甘い言葉で連れ出している者を泳がす事にする。
ご主人様から教えて貰ったこの【闇隠れ】という魔術は、影ないし暗闇の中であれば移動できる為こういった尾行ないし潜伏にはかなり有効な魔術である。
このような魔術は本来ならば一家相伝門外不出である事が多く、奴隷であるとはいえそれを赤の他人である私に惜しげもなく教えてくれるあたり懐の深さを感じる事ができる。
しかも魔術を覚えるにあたってどういう仕組みなのかは分からないのだが脳に直接刻まれ、専用の学習用アイテムを使用した次の瞬間には【闇隠れ】を行使できるようになったのも驚きである。
ご主人様曰く前世の世界で使っていた道具や知識を覚えていたりストレージから取り出して使う事ができると言っていたのだけれども、それだけの力や道具を持っており悪の道へ進むことなく隣人であるロレーヌ家を助ける為に行使しているご主人様の姿を見て、私もご主人様に恥じぬように、ご主人様から頂いた力を使っていきたいと強く思えたのと同時に、これから私が生きていく指標ともなった。
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