第43話 返しきれない恩を貰ってしまった
「そ、そうか……。気持ちだけは受け取っておこう」
もう何を言ってもオリヴィアの脳内で別の意味として変換されてしまうのであれば、ここは変に言い訳などせずに話を切り上げるのが得策であると思った俺は、言葉でキャッチボールする事を止めて会話を切り上げる方向へとシフトする。
でもまぁ、これでオリヴィアの精神状態が良好になるのであれば、ここは過去オリヴィアにしてきた贖罪として受け入れるべきだろう。
そして俺は、ここで立ち止まっているとオリヴィアに『俺がオリヴィアから何かしらのアクションを待っている』と勘違いされかねない為、そうなる前にそのままこの場を離れる。
「モテモテだな、ご主人様」
「そんなんじゃないさ」
この状態をアーシャに弄られながら、教室へと向かうのであった。
◆アーシャside
ご主人様から与えられた新しい人生は、いままで復讐だけ生きて来た人生と違って周囲がキラキラと輝いていた。
まさか私に普通の人間としての人生を送れるとは思ってもみなかった上に、ただ死にゆくだけの私を買ってくださり、身体も治してくださったご主人様には一生かけても返しきれない恩を貰ってしまったなと思う。
それは重荷とかではなく、私の生きる糧となっている。
勿論、あの時瀕死状態の私を拾ってくださった商人や、だけども回復薬を与える程の財力はない為奴隷商ならばと持って行った判断、そして売り物にならないにも関わらず買い取ってくれて適切な延命処置をしてくださった奴隷商にも恩を感じている。
それら一つでもかけていたら私はあの時に死んでいただろう。
その事を考えれば、死んでいった故郷の者達が私に『生きろ』と言ってくれているような気がしてくるから不思議である。
勿論、そのような考えができるようになったのはご主人様から言って貰えたあの時の言葉のお陰なのだが……とにかく私はご主人様やこの街へ恩を少しでも返すべく夜の闇へと姿をくらます。
ご主人様からは基本的に私の行動は規制されていないので深夜であろうが好きに動けるのは有り難いかぎりである。
「たしか……ここら辺だったような……あったあった」
とりあえずご主人様やこの街の為にこの私が何をできるのだろうか? と考えた時に思いついたのが街の治安に貢献する事なのだが、昼間に動いても衛兵が街を巡回しているというのもあってか治安はそこそこ良い方である。
それにやはり闇夜の方が姿を見られにくいというのもある為、より重い犯罪、それこそ快楽殺人とかを犯すような者達は皆が寝静まった頃に活動するだろう。
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