第42話 むしろ逆効果
そしてオリヴィアは少しだけ興奮気味にそう語る。
その表情は、以前まで俺に向けていたような恐怖心を抱いているものではなく、どちらかと言えば尊敬の眼差しを向けているように思える。
「は? そんな訳がないだろう。何を勘違いしているんだ? たまたま俺の考えている事とお前の親が抱えている問題が合致しており、そこを狙えば付け入る隙があるとおもったから今回の話を持ち込んだだけであり、お前たちの家を救う為にわざわざやった訳ではない。それにお前たちの家を救う為であれば金貨三千枚をそのまま与ておけば良いだけのはなしであり、何でお前たちを救うためだけにこんな面倒な事をこの俺がやらなければならないんだ?」
とりあえずオリヴィアに勘違いされたままではこの後色々と面倒事になりそうなので、変に誤魔化すような事をせずにはっきりと『関係ない』と言い切る事にする。
きっと、オリヴィアは『私たちの為に行動している』と言って欲しいのだろう、俺もそうする事でオリヴィアに対してやった事で感じている罪悪感を払拭する事ができる為お互いにとってそうした方が『今だけ見れば』最善策であるとは思うのだが、長期的に見れば逆効果になる事は間違いないので目先の利益に惑わされずに未来の為の種をまく事を選ぶ。
「そうですか……分かりました。これ以上は詮索しないので、とりあえずカイザル様にとっては、表向きはそのような方向に持って行って欲しいというのであれば、それにあわせましょう。それでも、万が一カイザル様があらぬ噂で心が潰れてしまいそうになった時は、どんなことがあっても私だけはカイザル様の味方だという事を思い出して頂ければ……その、嬉しく思いますし、その事を私に打ち明けて頂ければ、慰めてさしあげます……っ。っと、だから……その……、と、兎に角、私はカイザル様の事を恨んでなどおりませんし、感謝の言葉を伝えたかっただけです……っ!!」
「……いや、多分気のせいというかオリヴィアの勘違いというか、俺は普通にクズ野郎で間違いないと思うんだが?」
「……大丈夫ですカイザル様。私だけは本当のカイザル様の事を理解できておりますので変に取り繕う必要はないですよ? それに、本当にカイザル様の言うクズであれば婚約破棄しても変わらず私に対して酷い対応をするはずなのにこうして私の事をおもんぱかって会話をすることなど有りませんもの……っ!」
しかしながら俺の言葉はオリヴィアには正しく届いていなかったらしく、むしろ逆効果だったようで、なにやらオリヴィアの中では俺の評価が爆上がりしてしまったようである。
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