第40話 黒歴史でしかない



 そして魔術や武術では太刀打ちできないと理解はしているものの、それを認める事ができずに直視せず、平民には負けたくないからと努力する事から逃げて、努力しなくても持っている貴族の産まれという立場で偉ぶるものが大半を占め始める。


 その中で特に実家が太いというだけでふんぞり返っていたのが俺という訳である。


 はっきり言って思い出したくもない程に恥ずかしい行為であると今であれば自覚できるので、最早俺の中で今までの俺の生き方はまさに生き恥をさらしているにも関わらずその事に気付けないで踏ん反りかっちるバカであり、黒歴史でしかない。


「ふーん。一応強い者がいない訳でもないってわけね」

「そうだな……生徒会メンバーであれば、俺の奴隷になる前のアーシャとならばいい勝負ができるとは思うぞ? ただ実戦経験の差でアーシャに軍配はあがるとは思うのだが、その中でも生徒会長である氷の女帝と呼ばれているフィリア・オブ・エノーは苦戦すると思うぞ? あと、生徒会長を含めた生徒会メンバーの半数以上が数少ない武闘派の貴族なのだが、その家で代々伝わってきた秘伝の魔術や武技スキルなどを持っており、初見殺しされていたかもな。それでも今のアーシャであれば相手にならないと思うぞ」

「なるほど……ちょっと手合わせしてみたいと思ったのだが、今の私であれば確かに一方的な結果になりそうね。それならマリエルさんやスーさんと模擬戦をしたりご主人様に手ほどきをされた方がまだ有意義だし楽しめそうね……。というかご主人様の持っている知識やらアイテムやらがヤバ過ぎるだけな気もするわ……っ。あ、そうだご主人様っ!! 放課後に新しくできたカフェにいってみないかっ!?」


 なんだかんだで冒険者としてのプライドを刺激されたのかこの学園の生徒について聞いて来たアーシャなのだが、今のアーシャの方が圧倒的に強い旨を教えてやと、アーシャは学園の生徒から興味が無くなったのか放課後の過ごし方に興味が移ったようである。


「あ、あの……カイザル様……っ」

「うん? なんだ、オリヴィア。どうした?」


 そんなこんなでアーシャと他愛もない話をしていると、意を決したような表情でオリヴィアが話しかけてくる。


「……その……っ」

「ここでは話しづらいと言うのであれば人気の無い場所に移動するか?」

「いえ……ここで大丈夫です……っ」


 しかしながらなんだか話しづらそうにしてモゴモゴと口ごもっていたので人気のない場所に誘ってみるのだが、その必要は無いらしい。

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