第38話 『ご主人様の為』『ご主人様だからこそ』


◆主人side



 プレヴォとの一件以降、何故かプレヴォが学園へと来なくなり、その結果未だに俺のこと見下してくるものはいるものの、以前と違い『腐っても公爵家』という事が認知され始めたお陰で変なちょっかいをかけてくる者もおらず俺は快適な学園生活をできている。とは言っても後半は殆どプレヴォが大半であったのだが、それ以前でもバカにしてくる奴らは一定数いたので、そいつらが居なくなっただけでもかなりの違いだろう。


 まぁ、そいつらの実家にはクヴィスト家として有難い手紙を実家に送ってあげたのも大きいとは思う。


しかしながら過ごしやすくなったというのは良い事なのだが、それはそれとしてプレヴォが契約によって無理矢理俺を敬う態度を取らされる光景は一度でいいから見てみたかったなと思ってしまう。


 しかもプレヴォは俺と同じクラスである為その一日はさぞ楽しかった事だろうに、噂によると実家を追い出されてしまい縁も切られたとの事で、その未来は実現しない確率が高い為実に残念である。


 あと、視線で言うと今までとは別の視線が男性陣から注がれているのだが、その視線に関しては無視して良いだろう。


 正確には俺に注がれていると言うよりかは、俺が側仕えとして連れてきているアーシャに対しての感情によってくる『嫉妬』の籠った視線は、見方を変えればそれだけアーシャが魅力的であるという証でもあり、そういった視線に関してはむしろもっと自慢してやりたいと思えて来る。


 因みにマリエルとスーはシュバルツさんと一緒に働いてもらっている。


 特にスーに関しては土壌に栄養のある水を散布するという大切な役目を担っているのと、見た目がスライムである以上学園へ連れてくる事は厳しいだろう。


 初めてスーを見せた時のシュバルツさんと従業員たちの驚く様を考えれば尚更だろう。


「何か気になる事でもあったのかい? ご主人様」

「いや、皆アーシャの美しさに目を奪われているのを見て、俺は良い買い物が出来たなと思っていたところだ」

「そうかい。でもそれはご主人様の能力有ればの事。ここにいる者達はご主人様の力すら見破れぬような実力である事が分かる。その様な者たちがあの時の私を買い取ったとしても、結局は持って数日で死んでいた事でしょうし、万が一大金を積んで生きながらえたとしても自分よりも弱い者に仕えるのは私の方から断りたいものだ。それに、あの時ご主人様が私に言ってくれた言葉も、私が生き続ける事を選んだ要因としてかなり大きいから、身体が治ったとしてもご主人様でなければ自殺を選んでいただろうっ」


 そう言ってくれるのは物凄く嬉しいのだが、アーシャから感じる『ご主人様の為』『ご主人様だからこそ』という忠誠心が強すぎる気がするのは気のせいだろうか。


 それこそ俺が『俺の為に自害しろ』と言えばそのまま自害してしまうのではないかと思える程には忠誠心を感じてしまう。

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