第29話 仕方のない事なのかもしれない



 せっかく口頭で警告してやったというのに、プレヴォは尚も俺やオリヴィアに対して悪く言うので流石に看過できずにそのままプレヴォの顔面をぶん殴ると、プレヴォはその勢いのまま吹き飛び、背中から地面へ『どちゃっ』という音を奏でながら落ちる。


 警告するところまでは学園の規則で守られる範疇であったと思うのだが、流石に警告したにも関わらず貶めるような発言は流石に度が過ぎており、不敬罪が適用できる範囲であろう。


 流石に犯罪行為に関しては学園の規則であろうとも守られる訳がないというか、そもそも学園の規則は『家の権力で優劣を決める、または高圧的な態度を取る』事が規則違反なのでありプレヴォが先ほどまで俺に行ってきた行為は単なる誹謗中傷であり、さらに爵位をまだ継いでいないが貴族の嫡男である俺にたいする誹謗中傷は不敬罪にも当たるだろう。


 ようは、この段階で俺がプレヴォをぶん殴ったところで規則だ何だと咎められる謂れは無いという事である。


 その為にちゃんと証拠は『録画』してあるしな。


 プレヴォのしていたであろう録音もあれば言い逃れはまずできないだろう。


 というか、自分で録音しているにもかかわらず自分が不利になるような言動をしてしまうあたりやはりコイツの頭はあまり詰まっていないのかもしれない。


「お、お前……ついにやりやがったなっ!! この俺に暴力を振るったからには、やり返されても文句は言えないよなぁっ!!」


 そして俺がプレヴォを殴る事ができる状況を待っていた様に、プレヴォもまた俺に暴力を振るえる状況を待っていたのだろうし、その状況を作る為に煽ってもいたのだろう。


 むしろ言質を取る事よりもこっちの方が本命であった事は、プレヴォのにちゃにちゃと罠にかかった獲物を見るような笑顔を見れば一目瞭然である。


「あぁそう。でも、そう思うのならばさっさと襲ってこいよ。俺は優しいからお前が暴力でしか勝てないから俺を煽って暴力を振るえる状況に持ち込もうとしているお前の為に不敬罪や誹謗中傷などで突き出す前に相手してやるよ」


 というかそもそもその為に人気のない第四修練場の方に向かって歩いていたのだから、その時点でこの状況が俺の仕組んだ罠かもと少しくらい勘ぐっても良いだろうに、プレヴォは目の前にいる俺に暴力を振る事で頭がいっぱいになっているのかそこまで頭は回っていないようである。


 まぁ、そもそも脳みそが小さいのであれば当然処理スピードも落ちるだろうからそれは仕方のない事なのかもしれない。


 外付けHDDでも今度俺のストレージから購入してあげようかと思ってしまう。

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